国連責任投資原則(PRI)は5月28日、新型コロナウイルス・パンデミック下での信用リスクをESG観点から捉えた調査結果を発表した。債券市場関係者の間でもESG観点が強まっていることがわかった。
今回の発表は、PRIの「ESG in Credit Risk and Ratings Initiative」に参加している信用格付機関や機関投資家、発行体が行ったもの。PRIは4月と5月にウェビナーを実施しており、そこでのアンケート結果も発表され。
ウェビナー参加者に対し、パンデミックでE、S、Gのいずれが信用格付上のインプリケーションがあったかでは、ESG全てとの回答が46%で最多。パンデミックでは、健康や労働安全衛生、雇用等のS(社会)面で直接大きな影響を与えたが、「Sのみ」との回答は43%だった。「Gだけ」が7%、「いずれもなし」が4%、「Eだけ」が0%だった。
パンデミックでEとGにも影響を与えた側面については、Eではパンデミックによる感染防止策により化石燃料消費量削減や交通手段の変化という影響が、Gではリスクマネジメント能力が浮き彫りになったことことが指摘された。2008年のリーマン・ショックのときと比べて、信用格付にESGを組み入れる体系的なフレームワークが構築されている昨今では、当時とは大きく認識が異なっていることがわかった。
パンデミックにより、発行体と投資家のESGコミットメントに遅れが出るかでは、資金繰り事情から一部の企業では一時的に遅れるとした回答が73%と多数を占めた。但し事業が再開すれば、再びコミットメントの実行も始まるとともに特に環境面ではコミットメントを引き上げる動きがでるとの見方もあった。一方で、パンデミックでも全く遅れが出ないとの回答も25%。永久に遅れるとの回答はわずか2%だった。
また、債券投資家の間で、投資先とのエンゲージメントの中でサステナビリティ観点を扱うことは「Must」との回答が92%と圧倒的多数を占めた。株式投資家は、株主総会での公式なエンゲージメント機会があるが、債券投資家については個別でのエンゲージメントを実施していく流れになることを伺わせた。従業員解雇については、損失削減にはつながるが、レピュテーションリスクで効果は相殺されうるとし、従業員保護やロイヤルカスタマーの支援を期待するという意見も出た。
グリーンボンドの発行については、クレジットの観点からは通常の債券と同じだが、信用格付機関からは、希少性等によるボラティリティの低減効果は期待できるとの見方が出た。
【参照ページ】ESG, credit risk and COVID-19
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