インデックス開発大手米MSCIは6月15日、企業のESG評価と財務パフォーマンスとの関連性について分析し、調査結果を発表した。
今回の調査では、(1)ESGの中でもどの要素が最も企業の財務パフォーマンスに影響するのか、(2)企業をESGの観点で評価する際に、それぞれの要素をどの重み付けするべきなのかの2点について分析。
同分析は、同社が保有する13年分(2006年から2019年)の企業ESG データとESG評価モデルに元に、ESG評価の高い企業群(上位20%)と低い企業群(下位20%)の2グループに分け、グループ間の財務パフォーマンスを短期と長期の時間軸で比較して行われた。
財務パフォーマンスについては、企業の利益創出力(利益率、利益の安定性、配当率の高さ)、企業の特有リスク(不祥事頻度、市場平均以上のボラティリティ、ドローダウン)、システミックリスク(コモン・ファクター・リスク、ベータ、資本コスト)の3つを指標とした。
ESGの中でどの要素が企業パフォーマンスに最も寄与しているかについては、評価の時間軸と業界によって異なると結論づけた。短期的にはガバナンス(G)が最も影響しているとした一方で、長期的にはESG全ての要素が重要であるとした。これは、株価を短期間で大きく変動させうる重大イベントベースのリスク(詐欺事件や原油流出など)をマネジメントするのにガバナンスが効果的であるが、長い時間軸で徐々に株価に影響を与えうるリスク(二酸化炭素の排出や労務管理)のマネージには環境(E)と社会(S)に関する要素が有効であるため。
短期的な企業パフォーマンスを見ると、ガバナンス(G)評価の低い企業は市場価値を大幅に(90%以上)失う可能性が、評価の高い企業より2.4倍も高いことがわかった。また、長期的なパフォーマンスについては、環境(E)評価の高い企業は、低い企業より60%も株式パフォーマンスが高かった。
ただし、この傾向は全業界に一定ではなく、ESG要素による影響は業界ごとに異なることがわかった。ガバナンス(G)については、金融業界と一般消費財・サービス業界で特に重要度が高く、環境要素(E)についてはエネルギー業界と素材業界、そして社会要素(S)については一般消費財・サービス業界での重要性が高かった。
同調査のもう一つの焦点である、ESG評価における各要素の重み付けについては、業界横断的に画一化されたESG評価よりも、それぞれの業界の特徴を考慮してESGの重み付けがされた評価の方が、企業パフォーマンスをより適切に評価し、投資家へのより良い情報提供に資するとした。それぞれの業界に関連の深いESG要素を理解し、それぞれの業界に特化したESG評価の重要性を強調した。
【参照ページ】E, S or G: Which drives outperformance?
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