欧州委員会は7月8日、「EU水素戦略」を採択した。2050年までの二酸化炭素ネット排出量ゼロ(カーボンニュートラル)を実現するための戦略の一つと位置づけた。EUの2021年から2027年までの次期中期計画「Horizon Europe」の中でも、水素技術開発の研究やイノベーション支援を盛り込む。
水素の生産では、世界的に普及している現行法は、石炭やガスの改質による水素抽出で、生産工程で二酸化炭素を排出してしまう。一方、目下、研究開発が進められているのは、再生可能エネルギー電力を活用した水電解で水素を抽出する「グリーン水素」と、石炭やガスの改質だが炭素回収・貯蔵(CCS)設備を備えることで発生する二酸化炭素を吸収する「ブルー水素」の2つ。
今回のEU水素戦略では、このうち「グリーン水素」に集中することを明言したのが大きな特徴。具体的なアクションは3フェーズに分けて設定した。まず2020年から2024年までの第1フェーズでは、アンモニア生成などの化学業界で活用されている水素を、グリーン水素化する。電解のための発電設備容量は現行の1GWから2024年には6GWにまで6倍に増強。100万tの水素を生産する。
2024年から2030年までの第2フェーズでは、発電設備容量を40GW以上に拡大し、1,000万tの水素を生産する。水素の活用分野では、従来からの化学以外に、製鉄、トラック燃料、海上交通等に拡げる。
2030年から2050年までの第3フェーズでは、水素生産を大規模化し、技術面やコスト面で脱炭素化が困難とされる化石燃料分野の水素燃料化を進め、全面的な脱炭素化を実現する。アナリスト予想では、水素市場は2050年までに年間6,300億ユーロにまで拡大し、世界のエネルギー総需要の24%を賄うという。
グリーン水素普及に向けた欧州での投資額目標は、2050年までにグリーン水素分野で1,800億ユーロから4,700億ユーロ。ブルー水素分野では30億ユーロから180億ユーロ。
【参照ページ】Adoption of EU hydrogen strategy
【参照ページ】Questions and answers: A Hydrogen Strategy for a climate neutral Europe
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