長期志向経営推進イニシアチブの米FCLTGlobalは8月10日、投資家と企業のR&D投資を促すように提言するレポートを発表した。短期志向の傾向に警鐘を鳴らすとともに、長期志向のR&D投資のための提言をまとめた。
同レポートは、2009年から2018年のデータを分析。世界のR&D支出総額は、2009年から2018年にかけ3,740億米ドル(約39兆円)から7,780億米ドル(約82兆円)に増加。その一方で、追加投資の収益性は低下しており、例えば製薬業界では、2018年にはR&Dから上市までの費用は22億米ドルだったのに対し、R&Dからの収益率は1.9%に減少。FCLTGlobalは、短期的な視点に陥った結果、長期的なイノベーションが起こせなくなった結果と分析している。
専門家とのインタビューでも、短期的な収益性に対するプレッシャーが高まると、R&D予算がから削られることが多く、企業を成長させるイノベーションが起こしづらい環境になってしまうと証言した。
FCLTGlobalが2019年に発表したレポートでは、自社株買いや配当による資本分配は、合理的な場合もあるが、同アプローチを採用した企業の5年間のROICは低下する傾向があると指摘。逆に利益の大部分を再投資に利用した企業は、同業他社比で年間9%高いROICを記録したという結果も出ている。
【参考】【国際】FCLTGlobal、グローバル企業の長期経営度合い分析。リーマンショック時より低下と警鐘(2019年10月3日)
FCLTGlobalは、企業と株主双方のポートフォリオ最適化のため、長期志向のR&Dを構造化、評価、管理する手法を提案。目的ベースでR&D部門の従業員が複数プロジェクトに同時並行参画することや、短期・中期・長期のパフォーマンス指標の活用、市場投入までの想定期間別のR&D予算の内訳を投資家と共有、行動の偏りを緩和するための「迅速な失敗」を可能にすること等を挙げた。
さらに同社は、企業、取締役会、経営幹部、リスク委員会が、短期・中期・長期のR&D予算割当てを決定できるよう、R&Dの健全性を測定できる簡易ツール「R&D Scenario Engine」も発表した。
【参照ページ】Study shows corporate R&D investments suffer from short-term approach
【参照ページ】R&D Scenario Engine
Sustainable Japanの特長
Sustainable Japanは、サステナビリティ・ESGに関する
様々な情報収集を効率化できる専門メディアです。
- 時価総額上位100社の96%が登録済
- 業界第一人者が編集長
- 7記事/日程度追加、合計11,000以上の記事を読める
- 重要ニュースをウェビナーで分かりやすく解説※1
さらに詳しく ログインする※1:重要ニュース解説ウェビナー「SJダイジェスト」。詳細はこちら