長期経営推進イニシアチブの米FCLTGlobalは9月30日、グローバル企業と長期投資の成功の予測因子について調査したレポートを発表した。企業がリーマンショック以前より短期志向に陥っていると警鐘を鳴らした。
FCLTGlobalは、世界の有力な企業や投資家が参画。企業の長期経営や機関投資家の長期投資を推進している。現在の参画企業は、マッキンゼー、ブラックロック、フィデリティ・インベストメンツ、バークレイズ、ステート・ストリート・グローバル・アドバイザーズ、シュローダー、ナティクシス・インベストメント・マネージャーズ、ニューバーガー・バーマン、PGGM、カーライル・グループ、ブルームバーグ、ナスダック、MSCI、ラッセル・レイノルズ・アソシエイツ、ユニリーバ、グレンコア、グラクソ・スミスクライン、タタ、BP、AT&T、ダウ、DSM、エデルマン、EY、KPMG等。
今回の分析では、先進国23ヶ国及び新興国24カ国の約2,500社で構成するMSCI ACWIの採用企業を対象とし、現時点でデータ入手が容易な投下資本利益率(ROIC)に資する要素として、設備投資、R&D費に対する収益率、取締役会の性別ダイバーシティ、5年間の売上成長率平均、ESG不祥事(コントラバーシー)、資本負債比率等を特定。2004年から2017年までの加重平均した5年間の投下資本利益率(ROIC)への統計説明力を算出した。さらに、得られた各ファクターの統計説明力を年単位で合計し、MSCI ACWI企業全体の長期トレンドを計算した。計算の結果、2007年をピークに、その後減少傾向にあるという結果となった。
また、今回、投資家側として、アセットオーナーと運用会社でも、同様に長期投資度合いに資するファクターを特定し、長期トレンドを計算した。しかし今回の調査では、利用できるデータの少なさから、投資家側については、非常に少ないファクターでの分析しかできなかった。
- 運用会社のリスク調整後リターンは、ガバナンスと投資戦略に影響を受ける。要因には取締役会ダイバーシティ、アクティブオーナーシップ、コスト削減、株主資本比率の増加、上場株式とプライベートエクイティ双方へのエクスポージャー等がある。
- 企業による資本の過剰分配は、企業の収益性を損なう可能性がある。自社株買いや配当による資本分配は、合理的な場合もあるが、同アプローチを採用した企業の5年間のROICは低下する傾向がある。逆に収益の大部分を再投資に利用した企業は、同業他社比で年間9%高いROICを記録した。
- 企業の研究開発(R&D)はリスク調整後リターンを向上させる可能性がある。研究費増加と収益増加の関係性を調査した結果、R&D投資とROIC向上に正の相関が見られることが分かった。
- 従業員の自社株保有は、特に株式投資の運用会社にとって最も強力な成功予測因子であり、高いリスク調整後リターンに繋がることがグローバルで確認された。
【参照ページ】Report Finds that Companies Are More Short-sighted Than Before the Financial Crisis
【参照ページ】Predicting Long-term Success FOR CORPORATIONS AND INVESTORS WORLDWIDE
Sustainable Japanの特長
Sustainable Japanは、サステナビリティ・ESGに関する
様々な情報収集を効率化できる専門メディアです。
- 時価総額上位100社の96%が登録済
- 業界第一人者が編集長
- 7記事/日程度追加、合計11,000以上の記事を読める
- 重要ニュースをウェビナーで分かりやすく解説※1
さらに詳しく ログインする※1:重要ニュース解説ウェビナー「SJダイジェスト」。詳細はこちら