信用格付世界大手米ムーディーズは8月18日、米国では今後10年から20年で、原子力発電に対する気候変動関連の信用リスクが高まるとするレポートを発表した。機関投資家での原子力発電に対する懸念がさらに高まりそうだ。
今回のレポートは、同社の有料ユーザー限定のレポートとして発表された。同レポートによると、今後、米国の原子力発電の37GW分は洪水被害リスクが上昇し、48GWは水ストレス上昇による水供給難や、気温上昇の影響で操業リスクが高まるという。例えば、中西部やフロリダ南部では、熱波の影響が高まり、一方、西部のロッキー山脈地帯やカリフォルニア州では水の確保が難しくなるという。
同レポートは、ムーディーズが2019年に買収した気候変動物理的リスク評価専業のFour Twenty Sevenのデータに基づき算出した。同社によると、今回の調査結果から、必ずしもメルトダウンリスクが高まることを意味してはおらず、現在の発電所も異常気象に耐えられる設計にはなっているという。しかし、それでも気候変動による影響で、原子力発電所にも対策のための投資が必要となることを伝え形となった。
原子力発電は、全米の電力の約20%を支えており、再生可能エネルギーを含めた「脱炭素型電力」では設備容量の半分以上を占める。東日本大震災での福島第一原子力発電所事故以降、原子力規制委員会は各原子力発電所に対し、洪水リスク対策の強化を求めてきている。
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