米エネルギー大手NRGエナジーと日本のENEOSホールディングス子会社のJX石油開発がジョイントベンチャーが商業運転していた米国唯一の石炭火力発電所併設の炭素回収・貯蔵(CCS)プラントが、5月1日に廃止された。
原油価格の低迷に加え、機器の呼称もあったと報じられている。CCSの実用化は、日本の官民が掛けている技術だが、実用化に向けたハードルは依然として高いことが明らかとなった。
【参考】【アメリカ】JX石油開発とNRGエネルギー、世界最大級のCO2回収プラントが稼働開始。三菱重工が建設に参加(2017年1月26日)
同プランとの事業主体は、NRGエナジーとJX石油開発の合弁会社ペトラノヴァ・パリッシュホールディングスの100%子会社ペトラノヴァCCS I。2017年1月に、テキサス州ヒューストン中心部から南西約60kmに位置するNRGグループ保有の石炭火力発電所内で運転を開始。石炭燃焼で抄出される排ガスから二酸化炭素を分離・回収し、同州の老朽油田であるウエスト・ランチ油田に注入して採掘量を上げる「原油増進回収(EOR)」型のCCUS(炭素回収・利用・貯蔵)事業を営んでいた。
同事業では、三菱重工業の現地子会社である米国三菱重工業(MHIA)と米建設大手The Industrial Company(TIC)がコンソーシアムを組成し、CCSプラントをフルターンキー契約で受注していた。処理能力は日量4,776t。事業費は10億米ドル(約1,100億円)だった。
しかし、今年に入り、新型コロナウイルス・パンデミックの影響もあり、原油価格が急落。油田そのものの事業採算性が厳しくなり、それに伴い同CCSプラントの事業価値も減少。商業運転が厳しくなり廃止が決まった。
また米エネルギー庁への提出資料によると、併設のガス火力発電の呼称に伴い、同CCSプラントは2017年以降、367日間稼働停止していたこともわかった。また最初の3年間の処理実績は、日量4,776tの想定値に対し、83%にとどまったという。
但し、エネルギー庁は、今回のプラント廃止は、技術的な影響によるものではなく、事業採算性によるものと理解しているとのコメントを発表している。
EOR型のCCUSは、CCS及びCCUSの中で、最も収益性が高く期待が集まっていた。しかし、活用先となる石油市場そのものが脱炭素化の影響を受ける形となっており、以前よりも期待感が下がってきている。CCSやCCUSを本格化するなれば、EOR以外の手法での実用化・事業化が急務となってきている。
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