岸田文雄首相は7月14日、冬のエネルギー安定供給に向け、経済産業相に対し、原子力発電を最大9基稼働するよう指示したと表明した。しかし、電気事業連合会の池辺和弘会長(九州電力社長)は7月15日、定例会見の中で、9基の原子力発電稼働はもともと計画に織り込み済みで、安定供給の改善にはならないとの見解を伝えた。
岸田首相の会見では、冬に再度受給が逼迫するおそれがあることから、原子力発電を9基稼働させ、日本の電力消費量の約1割を確保する考えを伝えた。これを受け萩生田経済産業相は7月15日、閣議後の記者会見で、「原発の工事や検査期間の見直しなどで現在5基の稼働から最大9基の稼働を確保する」と言及。「この冬に向けては、安全性の確保を大前提にして、原子力発電所の運転再開を着実に進めていくなど、最大限の供給力確保に向けて万全の取り組みを進めていく」とし、安全性確保を最優先としながらも、再稼働を急ぐ考えを披露した。
日本政府が提示した「9基」の内訳は、すでに稼働中の5基を確実に稼働させるとともに、定期点検を終える4基を加え、9基を稼働させるというもの。具体的には、関西電力の大飯3号機、4号機、高浜3号機、4号機、美浜3号機、四国電力の伊方3号機、九州電力の川内1号機、2号機、玄海3号機。すでに国内の原子力発電は、福島第一原子力発電所事故後の新規制基準下で、10基が既に再稼働している。想定されている9基は、この10基に含まれ、新規の再稼働は予定されていないことになる。
電事連の池辺会長は、定例会見の中で「ほとんどの原発はすでに(供給力に)織り込んでいて、(需給が)厳しい状況には変わりない」と表明。すでに資源エネルギー庁の計画にも織り込まれており、今回の岸田首相の発表では、需給逼迫は解消しないとの考えを披露した。
岸田首相は記者会見の中で、火力発電の供給能力を追加的に10基を目指して確保することも、経済産業相に対し指示。本命は、停止中の石炭火力発電の再稼働とみられている。当然、エネルギー価格の高騰で火力発電のコストは高くなっており、二酸化炭素排出量も増加することになる。
【参照ページ】岸田内閣総理大臣記者会見
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