ロシア政府系エネルギー大手ガスプロムは7月25日、天然ガスパイプライン「ノルド・ストリーム1」を通じてドイツに送るガス輸送量が最大日量3,300万m3減少すると発表した。輸送容量の約20%に相当する。
ガスプロムの説明によると、カリーニングラードのPortvayaに設置されているコンプレッサー・タービンが、規定時間を超過してオーバーホールを起こしたため、ガスタービンをさらに1基止めるという。停止する機関はモスクワ時間で7月27日13時からとのみ伝え、終了予定時刻は明らかにしていない。
ノルド・ストリーム1を運営するノルド・ストリームは7月21日、7月11日から開始していた定期メンテナンス作業が、予定通り7月21日に終了し、パイプライン輸送を再開したと発表。輸送容量の40%の供給が始まった模様。しかしガスプロムの今回の発表により、新たな揺さぶりを始めてきたといえる。
【参考】【ヨーロッパ】ノルド・ストリーム1、定期メンテナンスでガス供給停止。欧州に大きな打撃(2022年7月12日)
ガスプロムは7月21日最近、ツイッターで重要事項の広報を発信しており、今回もツイッターでの発表となった。同社は、保守期間に入ったシーメンス製のタービンが、シーメンスから返却されないことに関し、同社の責任を追及するメッセージを頻繁に発信っしている。シーメンスは、カナダでメンテナンス作業を実施しているが、カナダ政府がガスプロムへのタービン返却に難色。カナダ政府は一度は経済制裁の例外として返却を実行する意向も伝えていたが、ウクライナ政府が反発。タービンの返却納品が完了していない。今度は、コンプレッサー・タービンをカードとして使ってきた模様。
同時にガスプロムは、中国がガスを大量に購入していることもツイッターで発信。他の販売先があることを強調することで、ロシア側には痛みがないことをあえて伝え、EU側を政治的に攻撃する狙いがあるとみられる。
EUでは、欧州委員会がガス使用量の15%削減を提案し、これを受け、EU上院の役割を果たす加盟国閣僚級のEU理事会は7月26日、エネルギー相会合を開催。今冬に向け天然ガス需要を自主的に15%削減するEU理事会規則で政治的合意に達した。
【参考】【EU】欧州委、ガス使用量15%減を提案。立法化へ。再エネ転換が最優先。石炭、原発も一時的には(2022年7月21日)
同規則では、自主的な削減がベースとなっているが、EU理事会が供給の安全保障に関する「EUアラート」を発動した場合、自主削減ではなく、各加盟国に削減が義務化される。今回のEU理事会規則は、EU理事会が供給の安全保障に関する「EUアラート」を発動する蓋然性が高まっていることも示唆。一方で、ハンガリー政府は、義務化に強く反発しており、今回のEU理事会規則の採択で、政治的混乱が収束しているわけではない。
[2022.8.7追記]
EU理事会は、同規則を採択した。採決にはハンガリーに加えて、ポーランド政府も反対に回った。
【参照ページ】Twitter
【参照ページ】Gas transmission via Nord Stream Pipeline resumed after completion of planned annual maintenance works
【参照ページ】Member states commit to reducing gas demand by 15% next winter
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