世界的なESG投資の興隆を受け、中国でも2022年に入りESG情報開示の基準整備がさらに進展している。7月から8月にかけて複数のESG関連フォーラムが開催され、情報開示の重要性が強調された。
まず、中国国務院国有資産監督管理委員会が所管するシンクタンクの指導の中国企業改革研究院(CERDI)は4月、中国初の任意参照のESG情報開示ガイダンス「企業ESG披露指南(企業ESG開示ガイダンス)(T/CERDS 2-2022)」を発行。6月1日に発効した。世界的なESG情報開示の要求を受けて、整備したと背景について語った。
企業ESG披露指南の特徴は、世界的なESG開示スタンダードを中国版としてアレンジしたもの。環境・社会・ガバナンスの3つの観点を網羅し、合計で118の具体的な定量・定性指標も定めた。首都経済商科大学の中国ESG研究所が策定を主導した。
同ガイダンスは、特に環境面では、気候変動、水、排水、廃棄物、有害化学物質、生物多様性を網羅した。一方、社会面では、労働慣行、労働安全衛生、製品責任、地域・コミュニティ開発等は国際的スタンダードを踏襲しているが、人権という表現はなし。またダイバーシティでは、ジェンダーダイバシティのみを盛り込んだ。他方、中国政府が進める「共同富裕」の思想を反映し、寄付の項目を明確においた。
同ガイダンスは、7月末に開催された第14回中国企業社会的責任年次フォーラムの中で催された「ESG発展サミットフォーラム」では、「ESGリサーチ年間大賞」を受賞している。
また、国務院直属の中国最高峰学術機関「中国社会科学院(CASS)」は7月24日、CSR報告ガイドライン「中国企業社会責任報告」の第5版「CASS-ESG 5.0」を発行。2009年に初版「CASS-CSR1.0」が発行されてから今回が4回目の改訂となるが、名称がCSRからESGへと変更。こちらも国際スタンダードを中国版としてアレンジした内容となっている。
さらに、中国標準化研究院(CNIS)は8月9日、中国企業改革発展研究会、首都経済貿易大学とともに、企業グループのESG評価フレームワーク「企業ESG評価システム」の開発に向けたプロジェクトを開始。「企業ESG披露指南(企業ESG開示ガイダンス)」を基に、実際に開示内容を評価する体制作りを始めた。同プロジェクトは、新華社通信グループの一つ「中国経済信息社(CEIS)」が主導している。今後、評価規格を確立していくとしている。
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