世界経済フォーラム(WEF)は9月6日、肝炎の感染率の低下についてエジプトのケーススタディを発表した。同国は、肝炎感染率世界一からほぼゼロになった。
ウイルス性肝炎は、世界で3億人以上が罹患しており、毎年110万人がB型およびC型肝炎で死亡していると推定されている。一方で、ウイルス性肝炎に対する有効な治療法が存在しており、2030年までに撲滅できる数少ない主要な感染症の1つである。世界保健機関(WHO)は、各国が肝炎撲滅キャンペーンを拡大すれば、今後9年間で450万人の死者を減らすことができると推定している。
同報告書は、エジプトで実施されたウイルス性肝炎撲滅に関する取り組みの重要な要素を整理したもの。ウイルス性肝炎を撲滅するために6,000万人に対して大規模なスクリーニングプログラムを展開し、400万人の治療を行った。取り組みの重要な要素として、政治的なコミットメント、マルチステークホルダーとの連携、長期的な利益の優先、を挙げた。
政治的なコミットメントでは、政府による医薬品の大量調達とジェネリック医薬品開発により、スクリーニングキットを含む医薬品のコスト削減を行い、国民にはすべての検査と治療を無料で提供。これにより、国民が積極的にプログラムに参加した。また、1億人の健康寿命キャンペーンを展開し、検診施設を毎日12時間の運営、同時に移動式の検診ユニットを展開することで検診に対するアクセシビリティを向上させた。その結果、7ヶ月で約5,000万人が検診に参加した。
また、保健省だけではなく、複数の省庁、NGO、国際パートナー等のマルチステークホルダー型の連携を実践。これにより6ヶ月という短期間で6万人以上の医療従事者が研修を受けることが可能となり、医薬品の開発など科学的なイノベーションを生み出す環境を整えることができた。こららの肝炎撲滅のための大規模な投資は、短期的なコストは大きいが、エジプト政府は、感染者の減少と肝臓がん等の合併症の予防により、長期的に大きな利益があると判断した。
今後、エジプト政府は、高リスクの人々に向けスクリーニングプログラムを継続し、肝炎の治療が困難な肝硬変と診断された40万人のフォローアップを行う計画も示した。また18歳未満や、B型肝炎の主な感染経路である母親から子供への感染を防ぐため妊婦を対象としたスクリーニングプログラムも計画している。
【参照ページ】Hope for Hepatitis Patients as New Paper Presents Path to its Elimination
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