国連開発計画(UNDP)は11月4日、パリ協定に基づくカーボンニュートラル経済を実現する上で、ジャスト・トランジション(公正な移行)の重要性を強調した報告書を発表した。5つの重点項目をまとめた。
2022年10月31日までに国別削減目標(NDC)を提出した170カ国のうち、ジャスト・トランジションに言及している国は38%の65ヶ国。地域別では、中東欧が最多。それに米州・カリブ海諸国、アフリカが続く。アジア太平洋とアラブ諸国は少なかった。先進国と発展途上国では約半々。NDCの中でジャスト・トランジションに関する専用の章や節を設けている国は11カ国にとどまった。
同様に、2022年10月31日までに長期戦略(LTS)を提出した52カ国のうち、ジャスト・トランジションに言及している国は56%の29ヶ国。地域別では、欧州と中央アジアが多く。それにアジア太平洋、米州・カリブ海諸国が続く形。アフリカとアラブ諸国は少なかった。LTSの中でジャスト・トランジションに関する専用の章や節を設けている国は16カ国でNDCよりはましだった。
但し、ほとんどのNDCやLTSでは、短期または長期の気候変動計画において、持続可能な開発目標(SDGs)やジェンダー平等と関連付けることに失敗しており、UNDPは「機会損失」と表現。NDCとLTSにおいて、ジャスト・トランジションをSDGsと関連付けている国はNDCで6ヶ国、LTSで4ヶ国、ジェンダー平等と関連付けている国はNDCで10ヶ国、LTSで4ヶ国だけだった。
また、ジャスト・トランジションでは、エネルギー部門に焦点が当たりがちだが、全部門を包括的に検討する経済・社会全体のアプローチが重要と指摘。これにより開発の便益が最大化できるとした。
同報告書では、ジャスト・トランジションの先進事例として、アンティグア・バーブーダ、コスタリカ、インド、セルビア、南アフリカの5カ国の事例を紹介。重要テーマとして、「現状の定量・定性アセスメント」「ステークホルダー・エンゲージメント」「制度とキャパシティビルディング」「ファイナンス」の4つでジャスト・トランジションを反映させることを謳った。
その上で、5つの重点項目では、
- 二酸化炭素排出量削減だけでなく、GDP増加、雇用創出、公正な社会までもを狙う多角的アプローチ
- グリーン雇用革命の支援
- カーボンニュートラル化での社会からの反発を防ぐため、透明性の高い意思決定プロセス
- 全国単位ではなく、地域単位のトランジション計画
- ジャスト・トランジションを含めたNDC及びLTSの策定
UNDPは目下、NDCとLTSにジャスト・トランジションを組み込むためのUNDPフレームワークを用い、34か国を支援している。
【参照ページ】Social and economic benefits of a global ‘green revolution’ at risk, according to UNDP report
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