英レベリング・アップ・住宅・コミュニティ省は12月7日、West Cumbria Miningがイングランド北西部カンブリア州で進めている石炭採掘計画を承認したと発表した。一般炭ではなく、原料炭の採掘を承認したが、一部報道では一般炭の採掘を承認したようにとられかねない誤解を招く表現となっている。
West Cumbria Miningは、2014年に同計画を発表。予算は1億6,500万ポンドで年間で原料炭を最大280万t採掘する計画を掲げている。英国は原料炭の多くを米国から輸入しており、国内産に切り替えることで輸送からの二酸化炭素排出量を削減できると主張している。
しかし、同計画に対し、英政府機関の気候変動委員会(CCC)委員長を務めるデベン卿は、原料炭でも下流サプライチェーンで二酸化炭素を排出させることから計画の撤回を要求。カンブリア郡議会は、2020年10月に同計画を承認したものの、レベリング・アップ・住宅・コミュニティ省の前身の住宅・コミュニティ・地方自治省のロバート・ジェンリック大臣が決定を覆し、計画検査官に計画の正式な評価を行うよう要請。スティーブン・ノルミントン計画検査官は2021年9月に公開調査を開始し、数カ月間、環境団体、関係者、政府等から証拠を取り寄せ、調査報告書は計画担当相に提出されたが、まだ結論は出ていない。
同案件は、すでに法廷闘争に突入しており、控訴裁判所は、原料炭の下流サプライチェーンでの使用時の二酸化炭素排出量に関しても、英政府は考慮することができると判断。それにより、原料炭に関しても排出懸念で政府が計画を中止させることが可能との雰囲気が出てきていた。
レベリング・アップ・住宅・コミュニティ省のマイケル・ゴーブ大臣は、決断を逡巡していた。当初は7月7日までに承認是非を決めなければならなかったが、まず11月8日へ、次に12月8日へ決断期限を延期。そして今回、ついに許可判断を下した形。深層石炭鉱石の採掘許可は英政府にとって30年ぶりとなる。政府は許可の説明の中で、使用時の二酸化炭素排出量について、政府は考慮することが「できる」ものの、今回は考慮しないことが妥当と判断したと説明した。
しかし、デベン卿は今回の発表直後に、反対を表明。原料炭の使用時の排出量が年間40万tと見込まれることを示し、原料炭からの排出量も同様に減らす必要があると主張している。また今回採掘の原料炭は英国の鉄鋼業界にとって実際には不要との見方も出ている。
今回の議論から、英国では原料炭の採掘も容易には進まなくなってきていることが伺える。
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