公正取引委員会は12月27日、原油価格の高騰や急激な円安によるエネルギーコストや原材料価格の上昇に関し、価格転嫁の協議を行わなかった発注事業者名の公表に踏み切った。競争法上の警告となった。
公正取引委員会は1月、下請法違反行為の未然防止のため、「下請代金支払遅延等防止法に関する運用基準」を改正を発表。エネルギーコストの上昇による価格転嫁を不当に拒否することを禁止する姿勢を明確にしていた。
また2月にはホームページのQ&Aコーナーに、労務費、原材料価格、エネルギーコスト等のコストの上昇分の取引価格への反映の必要性について、価格の交渉の場において明示的に協議することなく、従来どおりに取引価格を据え置くことや、取引の相手方が取引価格の引上げを求めたにもかかわらず、価格転嫁をしない理由を書面、電子メール等で取引の相手方に回答することなく、従来どおりに取引価格を据え置くことは、独占禁止法上の優越的地位の濫用に該当するおそれがあると伝えていた。
【参考】【日本】公取委、「買いたたき」にエネルギーコスト転嫁拒否を明記。文面回答もルール化(2022年1月29日)
そして公正取引委員会は、実態を把握するための緊急調査を実施。6月には、受注者80,000社に対して書面調査を実施し、4,573社に監視1社以上から指摘があった。それを受け、8月には4,573社に加え、受注者の回答結果や関係省庁・団体からの情報提供が多かった業種の発注者約25,000社を加え、書面調査を実施。さらに、7月から12月にかけ、受注者側書面調査、発注者側書面調査等を踏まえ、任意の立入調査を306件実施。特に、4,573社のうち指摘の多かった上位50社には、詳細な個別調査も行った。
結果、取引当事者に価格転嫁のための積極的な協議を促す目的で、労務費、原材料価格、エネルギーコスト等のコストの上昇分の取引価格への反映の必要性について、価格の交渉の場において明示的に協議することなく、従来どおりに取引価格を据え置いていた事業者名を公表。佐川急便、全国農業協同組合連合会(JA全農)、デンソー、東急コミュニティー、豊田自動織機、ドン・キホーテ、三菱食品、三菱電機ロジスティクス、大和物流、三協立山、トランコム、日本アクセス、丸和運輸機関の13社・団体の名称が公表された。但し、「独占禁止法や下請法に違反すること又はそのおそれを認定したものではない」とした。
また今回の緊急調査では、価格転嫁の協議申入れを拒絶するケースよりも、受注企業側がそもそも協議を行えず提示価格を受け入れざるをえないケースが多いこともわかった。今後、さらに受注企業側からの歩み寄りが求められる可能性も出てくる。
【参照ページ】(令和4年12月27日)独占禁止法上の「優越的地位の濫用」に関する緊急調査の結果について
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