EU上院の役割を担うEU加盟国閣僚級のEU理事会とEU下院の役割を担う欧州議会は12月14日、製造物責任制度(PL制度)の対象を拡大するため、民事の賠償責任指令を改正する案で政治的合意に達した。今後、双方での立法手続に入る。
今回の改正では、経済のサーキュラーエコノミー化やデジタル経済の進展によって、既存の規定ではカバーできなくなった分野をカバーしにいく。
まず、サーキュラーエコノミー化の進展により、元の製造者の管理外で製品が大幅に手が加えられ、市場で流通したり、再び使用されるようになった場合、同指令は、大幅な変更を行った企業または個人が、変更された製品の製造物責任を負うと規定した。
経済のデジタルエコノミー化により、製造物責任上の「製品」の定義を、デジタル製造ファイルとソフトウェアにまで拡大。商業活動の範囲外で開発または提供されるフリーソフトウェアやオープンソースソフトウェアは指令の範囲から除外される。Eコマース事業者に関しても、平均的な消費者が、Eコマース事業者もしくはEコマース上での販売事業者によって提供された製品と認識する方法で販売している場合には、Eコマース事業者も欠陥製品に対する責任が追及される可能性があることも規定する。
EU域外のメーカーから製品を購入する場合には、欠陥製品や欠陥部品の輸入事業者者、メーカーの公認販売代理人の責任が追及されるが、最後の手段として、フルフィルメント・サービス・プロバイダーも損害賠償責任を負うことができることも規定した。
さらに、欠陥製品によって損害を被った自然人には補償を受ける権利があることでも合意した。このような損害には、医学的に認められた精神的健康への損害を含む死亡または人身傷害、財産への損害または破壊、データの破壊または不可逆的な破損が含まれる。補償を受ける権利は、EU加盟国の国内法下で補償可能な限りにおいて、損害によって生じた物的損失および損害によって生じた非物質的損失を対象とする。
損害賠償請求での立証責任に関しては、特に技術的または科学的に複雑な事案のために、製品の欠陥またはその欠陥と損害との因果関係を証明することが過度に困難な場合、裁判所は、損害賠償請求者が製品の欠陥の可能性またはその欠陥が損害の原因となる可能性が高いことのみを証明すれば損害賠償請求を認めることができることも規定した。
またEU理事会と欧州議会は12月12日、EU経済制裁違反の刑事罰化に関しても政治的合意に達しており、今後の双方での立法手続に入る。違反時には、禁錮1年から5年と罰金のどちらかまたは両方を科す。さらに法人に対しては、事業活動の資格剥奪や、経済活動を行うための許認可の取消等の措置をとることも明確にする。これにより、EU加盟国の統一ルールとして整備する。
【参照ページ】Agreement between the Council and the European Parliament makes EU liability rules fit for the digital age and circular economy
【参照ページ】Council and Parliament reach political agreement to criminalise violation of EU sanctions
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