経済産業省電力・ガス取引監視等委員会は11月12日、電気事業法に基づき、JERAに対する業務改善勧告を発出した。卸電力取引所が開設する翌日市場(スポット市場)で、相場操縦があったとに認定した。
今回の事案は、遅くとも2019年4月から2023年10月までの間、卸電力取引所が開設する翌日市場(スポット市場)において、市場相場を変動させる認識を有しつつ、停止する発電ユニットの余剰電力の一部を供出していなかった。同委員会は、当該事実に関し、「適正な電力取引についての指針」における「市場相場を変動させることを目的として市場相場に重大な影響をもたらす取引を実行すること又は実行しないこと」に該当すると判断した。
具体的には、JERAは、東京エリアのスポット市場への余剰電力供出量の算定に当たり、停止する発電ユニット出力の一部に系統制約等の出力制約が生じた際、残りの出力を稼働させて供出することが可能な場合と、供出不可能な場合とを、区分することができていなかった。その結果、同社は、停止する発電ユニットの出力につき一部でも出力制約が生じていたコマについては、当該発電ユニットの残りの出力を供出することができる場合も含め一律にスポット市場へ供出不可として入札量を設定していた。これにより、スポット市場への「未供出」が生じていた。
また、同社が2019年4月に東京電力フュエル&パワーから火力発電事業を承継する以前の2017年年6月には、スポット市場においてスマートブロック(ブロック入札の時間帯毎の入札量を可変させる仕組み)機能が導入され、停止する発電ユニットであったとしても他の技術的または物理的制約がない限り出力制約を差し引いた発電ユニット出力を供出することが可能となっていたにもかかわらず、同社は、当委員会事務局の指摘に基づき同社が供出可能な停止する発電ユニットの余剰電力を合理的に供出することが可能となるようシステム改修を完了した2023年10月まで、本件未供出を継続的に発生させていた。
JERAでは、社内規程上は余剰電力の全量をスポット市場に供出すべきこととなっており、中部エリアにおける運用や新規電源にかかる供出量算定においては本件未供出と同様の未供出問題に対応できていた。また、同社において東京エリアのスポット市場入札を所掌していた東日本プラント運用センターでは、2019年31 年4月時点では本件未供出状態を認識していた職員が存在し、遅くとも2022年2月までには同センター所長も認識していた。さらに、るシステムの開発を所掌する部署に所属していた職員にJERAが実施したアンケートでは、未供出は、市場価格の高騰につながるおそれがあるとの回答が多数あった。
未供出の規模は、試算のためのデータが現存する2021年10月から2023年10月までの約3年で約54億kWh。そのうち約6.5億kWhの売り入札が約定していた可能性がある。一定の試算に基づけば、2023年11月の特定のコマにおいては、約定価格が50円/kWh 以上下落していた可能性もあるという。これにより、JERA自身が価格吊上げによる利益を享受していたことも考えられる。
今回の業務改善勧告では、スポット市場入札について、各プロセスが合理的であるか総点検を実施した上で、本来の需給関係によらずに相場を変動させ得ると考えられる箇所を特定し、システムの改修やマニュアルの改定等適切な措置を講ずること等を命じた。
【参照ページ】株式会社JERAに対する業務改善勧告を行いました
Sustainable Japanの特長
Sustainable Japanは、サステナビリティ・ESGに関する
様々な情報収集を効率化できる専門メディアです。
- 時価総額上位100社の96%が登録済
- 業界第一人者が編集長
- 7記事/日程度追加、合計11,000以上の記事を読める
- 重要ニュースをウェビナーで分かりやすく解説※1
さらに詳しく ログインする※1:重要ニュース解説ウェビナー「SJダイジェスト」。詳細はこちら