今や世界最大のクリーンエネルギー投資企業の1社でもあるIT業界の巨人アップルが、また一つ新たに業界に先立ち革新的な取り組みを公表した。アップルは2月17日、同社がグローバルで推進しているクリーンエネルギー・プロジェクトの展開を加速させるべく、米国企業では最大規模となる15億米ドルのグリーンボンドを発行すると発表した。ロイター通信が報じている。
グリーンボンドの販売により得られた資金は、再生可能エネルギープロジェクトやエネルギー貯蔵、エネルギー効率化プロジェクト、グリーンビルディング化への取り組み、省資源化などに活用される予定だという。
現状、グリーンボンド市場は債権市場全体の規模を考えればまだ一部を占めるに過ぎないものの、気候変動リスクが世界中で高まりを見せるなかで低炭素投資に対する投資家からの関心は確実に高まっており、さらなる需要の拡大が期待されている。格付大手のムーディーズ・インベスターズ・サービスが今年の2月初旬に発表した調査によると、昨年12月のCOP21におけるパリ合意を受けて、2016年のグリーンボンド発行額は昨年の424億米ドルよりも更に増加し、500億米ドル以上に拡大する見込みだという。
グリーンボンド市場が拡大する一方で、その使途の透明性や共通の基準に関する投資家の懸念も出てきている。グリーンボンドの定義は非常に多様であり、社会的責任を意識した投資信託については、保険会社らグリーンボンドの買い手は異なる独自の自主ガイドラインに基づき投資をしているのが現状だ。
こうした課題を踏まえ、グリーンボンドの共通化、透明性の向上による市場の健全な発展を目指して2014年に公表されたのが「グリーンボンド原則」で、現在は日本の金融機関も含めて世界25の大手金融機関が同原則に署名している。
アップルは今回のグリーンボンド発行にあたりこのグリーンボンド原則を適用しており、ESG格付け大手のサステナリティクスが同社のグリーンボンドが基準に準拠していることを確認したという。グリーンボンドで得られた資金の使途についてはアーンスト&ヤングが年次監査を行う予定だ。
アップルはグローバル全体の事業運営を100%再生可能エネルギーで賄うという目標を掲げ、自社およびサプライヤーのカーボンフットプリント削減に向けて世界中で大規模なクリーンエネルギー・プロジェクトを展開している。
昨年の10月には中国における製造サプライヤーのカーボンフットプリント削減に向けた新たなクリーンエネルギープログラムを公表し、同社の最大手サプライヤーであるフォックスコンなどとの協働によるメガソーラーの建設計画などを発表していた。今回のグリーンボンド発行により同社の取り組みがさらに加速することを期待したい。
【参照記事】Apple issues $1.5 billion in green bonds in first sale
【企業サイト】Apple
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