私たちが普段何気なく身に着けている衣類が、製造段階や消費者による洗濯などにより多くの水資源を消費していることを意識したことはあるだろうか。
ジーンズメーカー大手のLevi Strauss & Co.(以下、リーバイス)は、3月17日、同社の水使用量削減プログラム、Water Less processを通じて2011年以降で10億リットルの水使用量の削減に成功したと発表した。
同時に、同社は2007年に公表した自社の事業および製品が環境へ与える影響に関する調査の最新版となるProduct Lifecycle Assessment(以下、LCA)も公開した。最新の調査では、製品のライフサイクル全体や、綿を生産する主要地域における環境負荷、アパレル製品の生産や流通、主要な市場における消費者の製品の洗い方・乾かし方といった部分にいたるまで詳細に分析がなされている。
同社の調査によれば、現在ジーンズ1枚のライフタイム全体で約3,800リットルの水が使用されており、水使用のうち68%を占める綿の栽培と、23%を占める消費者の洗濯等による水使用が、最も環境へ影響を与えているという。また、消費者の製品の扱い方もエネルギー使用量増加や気候変動に大きな影響を与えており、ジーンズのライフサイクル全体の間で排出される33.4kgのCO2のうち、実に37%が消費者から排出されているとのことだ。
新たなLCAでは、綿栽培が環境に与える影響をより深く理解し、米国や中国、ブラジル、インド、パキスタン、オーストラリアといった世界の主要な綿生産国のデータを網羅するために、調査範囲が以前よりも拡大されている。また、近年市場が拡大している中国、フランス、英国といった地域からも、洗濯方法による費用やメリットの違いを理解するために消費者の製品の扱い方に関するデータが収集、分析されている。
綿の消費による環境負荷を減らすために、リーバイスはベター・コットン・イニシアチブ(以下BCI)と協働し、より少ない水で綿を栽培する方法を指導している。最新のBCIのデータによれば、BCIが推奨する方法で生産を行った中国の綿生産者は、そうでない生産者と比較して23%の水使用量削減に成功しているという。リーバイスはこのように世界中でサプライヤーとの協働を進め、現在6%となっているベター・コットンの使用量を2020年までに75%まで引き上げる計画だ。
また、リーバイスはWater Less processの推進により、製品生産時における水使用量の削減への取り組みを進めている。現在Water Less™の技術により生産されているリーバイス製品は約25%だが、2020年までにこの割合を80%まで高めるとしている。
さらに、今回発表された新たなLCAでは、米国人や中国人やフランス人、英国人よりも多くの水とエネルギーをジーンズの洗濯の際に使用していることがも明らかになった。中国の消費者は平均で洗う前に4回ジーンズを穿いており、もし米国人がこれを実践すれば、ジーンズの洗濯が与える気候変動への影響を半分に減らすことができるという。
リーバイスのCEOを務めるChip Bergh氏は、「ジーンズを穿くたびに洗濯するといった無意識の行動を再考すべきときに来ている。なぜなら、多くの場合、単純に必要ないからだ。我々のLCAの調査結果は、我々が企業としてどのようにジーンズを生産するべきかを再考させてくれる。また、水資源の管理により10億リットルの水使用を削減したという事実を誇りに思う。消費者への教育などにより、我々はアパレル業界が環境へもたらす影響や消費者の服に関する考えを根本から変えることが可能なのだ。」と語った。
リーバイスが今回公表したLCAの内容は、ジーンズの洗濯といった我々の身近な場面における無意識の習慣も、水問題に関して大きな影響を与える可能性があるという警鐘を鳴らしている。
【参照リリース】LEVI STRAUSS & CO. REACHES 1 BILLION LITERS OF WATER SAVED THROUGH SUSTAINABILITY INITIATIVES; RELEASES NEW ENVIRONMENTAL IMPACT STUDY ON APPAR
【企業サイト】Levi Strauss & Co.
(※写真提供:Northfoto / Shutterstock.com)
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