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【ドイツ】SAP、2014年度の統合報告書を公表。財務と非財務の関係性を定量化

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 ソフトウェア大手のSAPは3月20日、2014年度の統合報告書を発表した。今回の統合報告書の特徴は、初めて従業員エンゲージメントおよび従業員の健康指標の変化が営業利益に与える影響について具体的な数値で示した点だ。

 SAPが独自に構築したモデルに基づくと、同社では、従業員エンゲージメント指数が1%上がると営業利益は3500~4500万ユーロ増加し、ビジネスヘルスカルチャー指数が1%上がると、営業利益は6500~7500万ユーロ増加するという結果を示すという。統合報告の中には新たにこの2つの指数が加わり、定量化された財務への影響を表すKPIは既存の「従業員定着率」と「CO2排出量」の2つから4つに増えた。

 SAPはこれらのモデルに毎年微調整を加えているが、同社によれば従業員定着率の1%の変化は営業利益に4000~5000万ユーロの影響をもたらし、CO2排出量が1%削減されると400万ユーロのコスト削減が実現できるという。

 SAPが利用している社内モデルでは、特に間接的な影響を考慮している点が特徴的だ。例えば、従業員エンゲージメント指数の高さによる財務への影響は、献身的な従業員はより革新的で休暇日数が少なく、彼らは売上を逃すこともなく、定着率が高さから変動費の高さの要因となる研修・採用コストの抑制にもつながるという事実に基づいている。また、同社は、それぞれのKPIは互いに密接に関連し、影響を及ぼし合っているため、これらの多様な定量化を単純に加えることはできないとしている。なお、統合報告書ではこうした非財務要素の改善に必要な投資に関する分析は含まれていない。

 同報告書の主なポイントは下記の通りだ。

  1. SAPの従業員の福利厚生と労働条件、リーダーシップ文化といった要素を分析した「ビジネスヘルスカルチャー」指数は前年比3%上昇の70%となり、19500~22500万ユーロに相当する営業利益増加につながった。同指数の上昇は、従業員が無料で健康診断を受けられる「従業員健康サポートプログラム」や、より強力なリーダーシップ開発への取り組みによるものだとSAPは解説している。
  2. SAPの従業員定着率は横ばいで93.5%に留まっている。SAPはある程度の離職はイノベーションに必要だという考えから、100%を目標にしていない。
  3. SAPの2014年度の温室効果ガス排出量は50万トンで、前年比で4.5万トン減少した。2014年前半からSAPの全てのデータセンターと施設が100%再生可能エネルギーで稼動していることがこの減少の主な理由だ。

 SAPでCFO(最高財務責任者)を務めるLuka Mucic氏は「社会・環境面のパフォーマンスと営業利益の関係に期待することと、その関係を定量化することには大きな違いがある。誰もが献身的な従業員がいる会社はもっと成功できるとわかっているが、2014年は従業員エンゲージメント指数が2%増加したことで7000~9000万ユーロの営業利益増加につながったというデータがあれば、従業員エンゲージメントをより優先するべきだと上司を説得するのがとても容易になる。」と語った。

 SAPのように、従業員エンゲージメントや健康、企業文化といった非財務情報を数値化し、財務との関係性を定量化しようという試みは真の統合思考の実践だと言える。具体的な数値を基にして非財務パフォーマンスの改善が財務状況の改善につながることを示すことができれば、環境、社会といった非財務への投資は大きく促進されるはずだ。また、同社の場合はCFOのMucic氏がその重要性を認識している点も強みだと言えるだろう。同社の統合報告の詳細について知りたい方はぜひ下記を参考にしてほしい。

【レポートダウンロード】Integrated Report 2014
【リリース原文】2014 Integrated Report: SAP Quantifies Its Social and Environmental Performance
【企業サイト】SAP


(※写真提供:Gil C / Shutterstock.com

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