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【アメリカ】連邦税当局、財団の公益金融事業を税制優遇対象とする方針を明確化

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 米連邦政府の財務省と内国歳入庁は4月21日、民間財団が実施ているインパクト投資の一形態である「プログラム関連投資(PRIs)」に関し、従来よりも実質的に税制優遇対象が拡大される新たな基準を発表し、今回6つの具体的な事例を紹介した。米国では財団が投融資を行うことが珍しくない。例えば、社会的弱者への低利教育ローンの提供や、企業と連携するため企業への出資を行うこともある。従来は、どこまで非営利活動としての税制優遇対象で、どこからが課税対象となるのかが明確でなかった。今回政府は、基準を明確化し、財団が掲げる社会的使命の達成のため、金融手法を使いやすい環境を整えた。

 連邦内国歳入法4944条(C)は2012年に制定され、財団が行う「プログラム関連投資」に対して税制優遇を実施すると規定している。プログラム関連投資として認められる基準は三つあり、(1)同法170条(c)(2)(B)で規定された分野(宗教、慈善活動、科学、読み書き、教育、アマチュアスポーツ、動物保護)への投資、(2)インカムベインや資産価値向上を顕著な投資目的としない、(3)有権者のための法整備や政治的活動を目的としない、の全てを満たす必要がある。しかしながら、投資活動には自然にインカムゲインやキャピタルゲインは付いて回るものであるため、(2)の規定によりプログラム関連投資とみなされないことをおそれて、財団は「プログラム関連投資」という制度の活用には及び腰であった。また、認定されなかった場合に追徴課税の可能性も重荷になっており、財団は(2)の規定の明確な線引を求めていた。

 財務省と内国歳入庁が今回明確にした基準は、非営利を広く定義したものとなっている。日本では非営利というと利益を得てはいけないという感覚があるが、今回の基準では、公益要素が強いプログラムであれば、金融手法を用いた投融資であっても、市場金利や市場期待リターンより低いリターンを要求するものについては税制優遇対象とする。今回示された適格事例としては、

  1. 疾病対策という公益のために企業との共同出資で合弁企業を設置。業界一般より低い市場リターンを要求する
  2. 投資銀行が出資を渋る廃棄物リサイクルのベンチャー企業にハイリターンを期待して出資する
  3. 商業銀行が融資を渋る公益ミッションを持つ企業に高金利融資を実施する
  4. 市場金利より低利で社会的弱者に融資をする企業の資金繰りのために融資を実施する
  5. 市場金利より低利で社会的弱者に融資を実施する
  6. 市場金利より低利で貧しい農家からのフェアトレードを実施する企業に設備投資資金を融資する
  7. 市場金利より低利で文化的活動を行う企業に対して事業融資を実施する
  8. 児童福祉を行うNPOが銀行から融資を受けられるよう担保資金をその銀行に預金。市場より低利の預金金利を要求する
  9. 児童福祉を行うNPOが銀行から融資を受けられるよう保証人になる

 今回のポイントは、投資や融資といった採算性のある金融事業を営んだとしても、同程度のリスクに対して市場が要求する金利やリターンより低い金利やリターンを要求する場合は、プログラム関連投資適格性を満たすと明確にされたことだ。今回、税当局がプログラム関連投資の内容を幅広く定義したことで、プログラム関連投資制度の普及と、インパクト投資全体が拡大することが期待されている。ここにも、財務リターンと社会・環境リターンは両立しうるという新たなESGの概念が政府当局にも浸透してきていることが見て取れる。

【参照ページ】Steps to Catalyze Private Foundation Impact Investing
【発表内容】Examples of Program-Related Investments
【政府サイト】内国歳入庁

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株式会社ニューラル サステナビリティ研究所

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