タクシー配車アプリ世界大手の米ウーバーが、タクシードライバーを従業員ではなく、独立事業者と扱って来たことが係争されていた案件で、サンフランシスコ連邦地方裁判所は8月18日、タクシードライバーを独立事業者として扱ったまま補償金を支払うとしたウーバーとタクシードライバー38万人との間で和解合意を認めないことを決めた。同裁判所は「合意は公正さに欠け、不十分で納得いくものではない」と結論づけた。同裁判所はまた、両者は新たな解決策に向け9月15日までに裁判所に出頭することを命じた。
ウーバーが世界的に展開するタクシー配車アプリに対しては、世界中で裁判が起こっており、主にタクシー業界を脅かされたタクシードライバーやタクシードライバー団体からの訴えによるものが多い。一方で今回のサンフランシスコでの裁判は、ウーバーがタクシードライバーをどのように扱うかが争点となっている。ウーバーは、コスト削減のためタクシードライバーを従業員としてではなく独立事業者として扱い、ガソリン代などの経費や社会保険などの負担から逃れているという見方がある。サンフランシスコ州とマサチューセッツ州のタクシードライバーは集団訴訟を起こし、ウーバーに対して従業員として処遇するよう求めていた。
今年4月この問題は一旦解決されたかに見えた。ウーバーのTravis Kalanick CEOは4月21日、ウーバーがサンフランシスコ州とマサチューセッツ州のタクシードライバーらとの間で和解に達したと同社のブログで発表した。和解内容は、ウーバーは引き続きタクシードライバーを独立事業者として扱う一方、直ちに8,400万米ドル(約86億円)の補償金を支払うと同時に、将来同社がIPOを行いその後1年以内に2015年12月時点より1.5倍の企業価値となった場合には追加で1,600万米ドル(約17億円)を支払うことを約束するというもの。また、和解では、ウーバーがサービスの一環として行っているドライバー格付の手法をより明らかにしていくことも約束した。また、ドライバーがサービスにログインしている間に配車を拒否したとしても、ペナルティを課さないことも同社は約束した。
今回、サンフランシスコ連邦地裁が、両者の和解を認めないとしたことで、両者の交渉は再び振り出しに戻った形だ。実際には、タクシードライバーたち自身はより会社に拘束される従業員としての処遇を望んでおらず、補償金の受取で満足している人々も少なくないという声もある。しかしながら、労働規制当局や裁判所にとって、労働者の扱いを巡る論争は当事者間の納得だけでは済まされない重大な問題に見えているようだ。
昨今、ウェブアプリケーションなどでの労働力手配サービスが進むに連れ、従業員なのか独立事業者なのかという労働者の処遇を問う問題は続々と増えてきている。ウーバー社の事案がどこに着地するのかには大きな関心が寄せられている。
【裁判所文書】Case 3:13-cv-03826-EMC Document 748 Filed 08/18/16
【CEOブログ】Growing and growing up
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