SASB(米国サステナビリティ会計基準審議会)10月19日、投資家向けに各業種が気候変動から受ける影響をまとめた報告書「Technical Bulletin on Climate Risk(気候変動についてのテクニカル報告書)」を発表した。昨今、気候変動が企業に及ぼす影響について様々な報告が出ているが、SASBは可能性の高い具体的な各業種への影響だけを取り上げ、各業種において注視すべきポイントをまとめた。この報告書を参照することで、投資家は現実的な各業種分析ができるようになるという。SASBは数あるサステナビリティ報告ガイドライン策定機関の中でも、投資家視点のマテリアリティ(重愛性の高いもの)を重要視している。今回も投資家に焦点を絞り、内容をまとめた。機関投資家やIR担当者は一読しておくべき内容だ。
今回の報告書は全部で4部構成。第1部「SASB Climate Risk Materiality Map(SASB気候変動マテリアリティマップ)」では、気候変動が与える影響を、(1)Physical Effects(海水位上昇による影響など気候変動そのものが与える影響)、(2)Transition to a Resilient, Low-carbon Economy(エネルギーシフトなど低炭素社会に向けた構造変化が与える影響)、(3)Climate Regulation(新たな規制が与える影響)の3つに分類し、SASBが分類している業種ごとに関連するリスクをマッピングした。第2部「Financial Impacts of Climate Risk(気候変動リスクの財務影響)」では、「売上」「事業コスト」「資産価値」「資金調達コスト」の4つの視点から、気候変動が72業種それぞれについてどの財務指標に影響をあたえるかをマッピングした。第3部「Recommended Climate Risk Disclosures by Industry(推奨される業種ごとの気候変動リスク開示情報)」では、より詳細に、投資家が各73業種に対してどのような気候変動関連情報の開示を要求していくべきかを具体的にまとめた。第4部「Current State of Climate Risk Disclosure(気候変動リスク開示の現状)」では、各業種ごとの米大手企業を取り上げ、情報開示の現状傾向をまとめた。
今回SASBが取り上げた72業種は、SASBが気候変動が影響を与えると判断した業種で、全79業種のうちほとんどの業種が影響を受けることがわかる。SASBは、このように気候変動影響は経済界全体に渡るため、気候変動リスクを回避したポートフォリオを構築するのは事実上不可能で、投資先企業について働きかけをしてリスクを抑制するしかないとコメントしている。
【参照ページ】SASB Publishes Technical Bulletin on Climate Risk
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