世界医師会(WMA)は10月22日、台湾・台北で開かれた年次総会で、化石燃料は健康に対して有害との観点から、世界の医療関係者に対して化石燃料からのダイベストメント(投融資引揚げ)を求める声明を採択した。世界医師会は、1947年に設立され、世界85カ国の医師会が加盟するNGO。日本医師会も加盟している。
世界医師会は2014年、人口密度の高い多くの都市で世界保健機関(WHO)が推奨するレベルの50倍以上もの微細煤塵が蔓延しており、その背景には交通輸送、石炭火力発電、建設機械を起因とする汚染があるとする声明を出しており、さらに昨今の気候変動や異常気象により人体に健康に甚大な悪影響が懸念されると指摘。子供、高齢者、心臓肺疾患者、貧困層などはとりわけリスクが高まっているとした。世界医師会は2009年にも、同機関が気候変動による健康への影響と解決策を示す責任があり、今後具体的なアクションプランを検討すべきだとする「デリー宣言」を採択しており、今回その具体策の一環として、ダイベストメントに着目、世界五大医学雑誌の一つランセットの「健康と気候変動委員会」の声明や、昨年のパリ協定を踏まえ、世界各国の医療関係者や医療機関、医療関連年金等機関投資家に対して以下の勧告を行った。
- 温室効果ガス削減がもたらす健康への便益を医療科学者、経済界、市民社会、政府に対して啓蒙し、経済政策に健康影響アセスメント(HIA)を組み込むよう提唱すること
- エネルギー企業が再生可能エネルギーにシフトするよう環境規制や環境基準の強化を政府に対して働きかけること
- 化石燃料採掘や化石燃料火力発電に関わる企業への投資を停止し、再生可能エネルギー発電会社に投資すること
- 国連グローバル・コンパクト(UNGC)の環境原則沿った企業への投資を増やし、環境責任に関する法規制に準拠しない企業への投資を停止すること
気候変動が社会にもたらすリスクが年々明らかになり、指摘も増えてきている。人類の健康被害に対して最も関心を寄せる医療関係者の世界機関からついに化石燃料ダイベストメント声明が出された。
【参照ページ】WMA Statement on Divestment in Fossil Fuels
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