英公共放送BBCは4月2日、テレビ番組の報道・司会・コメント等を担当するエキスパート・スタッフの人数を来年までに男女半々にすると発表した。さらに計画通りに男女均等が保たれているかどうか、毎月モニタリングするとした。BBCでは今年1月7日、キャリー・グレイシー中国編集長、男性同僚との賃金格差を理由に編集長の職を抗議辞任しており、対策に追われている。
英国では2017年4月6日、従業員数250人以上の企業と政府機関を対象に、従業員に支払った男女別の給与データを毎年報告することを義務付ける法律「2010年平等法 2017年(男女間賃金格差情報)規則(GPG法)」が施行。初年度の締切日となった2018年4月5日までに各社が政府に報告する中で、今回のような事態が次々と発覚している。
【参考】【イギリス】男女間賃金格差報告法が初年度の報告締切。78%の企業・機関で男性厚遇(2018年4月7日)
BBCによると、男女均等計画の一部はすでに多くのプログラムで実施されており、BBC1の「アンドリュー・マー・ショー」やラジオ4の「ファイル・オン4」では、性別の記録を開始して以降、女性のエキスパートスタッフが10%増加しているという。BBCのトニー・ホール会長は今回の計画について、「素晴らしいプロジェクトであり、プログラムにも目覚ましい成果をもたらしている」と述べている。
その一方、当事者である女性スタッフたちの声は冷ややか。女性やジェンダーの問題を多く取り上げている長寿ラジオ番組「女性の時間」の司会者で、170人以上いる女性司会者やディレクター等のリーダー的存在であるジェーン・ガービー氏は、「まるで政府のように、新しくない試みをあたかも新しいかのように発表している。今回の意気込みに私自身は特に感激していない」と語る。同氏は、BBCには性差の問題に加え、エスニックや階級の多様性等、取り組むべき問題が他にもあると指摘する。
BBCの調査を受託したコンサルティング大手PwCが7月に発表した報告書によると、2017年3月31日時点で同社の男女間給与格差は平均値で10.7%、中央値で9.3%だったと明記。同社によると、英国における平均的な男女間給与格差は18.1%だという。加えて、年収が15万ポンド(約2,300万円)以上得ている「スター出演者」(BBCのスタッフも含まれる)の3人に2人が男性であることも明らかとなり、その中には同社の北米編集長と中東編集長も含まれていた。キャリー・グレイシー元中国編集長の辞任はこの報告によるもの。
同氏は、この2人の男性編集長の給与は、自分を含む女性海外担当編集長2名と比べ、少なくとも50%以上の高いことを公開書簡で告発し、BBCには「秘密主義的で違法な給与体系の文化がある」と非難した。これに対してBBCは、「女性に対する組織的な差別はない」と反論していた。同氏は中国編集長の辞任後に古巣の本部ニュース編集局に戻り、ブログ等を通して給与差別の撤廃を訴え続けており、局内の女性スタッフを初めとして、内外から支持されている。
男女の給与格差が生まれる背景には、女性が給与の高いポジションに付けてないというものと、同じポジションでも女性の給与が低いというものと、この2つ両方が起こっていることの3つが考えられる。BBCの女性グループは、PwCが作成した報告書が、女性のポジションが低いことを強調し、同じポジションでも女性の給与が低いという問題から目を逸らすものとなっていると非難。BBC経営陣への忖度があったのではないかと、批判の目はPwCにも向かっている。
【参考ページ】BBC targets 50/50 split in male and female experts by next year
【参考ページ】BBC China editor Carrie Gracie quits post in equal pay row
【参考ページ】Women at BBC criticise pay review over failure to identify gender bias
【参考ページ】BBC Statutory Gender Pay Report
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