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【イギリス】労働年金省、職域年金基金にESG考慮を義務化する最終ルール案公表。受託者責任明確化

 英労働年金省は9月11日、職域年金基金(企業年金)に対し、フィデューシャリー・デューティー(受託者責任)の内容を明確化し、投資運用にESGリスク考慮を義務化する政策案の最終内容を発表した。英政府は、2016年から政府と国会の法律委員会(Law Commission)の間で、職域年金基金のフィデューシャリー・デューティーや社会的投資のあり方に関するルール案の審議を開始。2018年6月には最終ルール案を公表し、7月16日までパブリックコメント募集を行っていた。今回のルール案は、そのパブリックコメント踏まえ、政府としての最終ルール案を明らかにしたもの。今後、国会での法改正を含め、ルール改正の手続きに入る。

【参考】【イギリス】政府、職域年金基金に受益者の社会・環境リスク指向考慮を義務化する法案発表(2018年6月24日)

 今回の政策案は2段階での施行を予定している。

2019年10月までに施行

  • 中規模以上の職域年金基金に策定が義務付けられている「投資原則声明(SIP)」の中に、気候変動を含むESGに関する内容の記載、及び議決権行使や現ゲージメント等のスチュワードシップに関する内容の記載を義務化し、年金基金加入者や年金基金加入検討者に的確に情報提供されるよう、各年金基金のホームページでの公表も義務化する
  • 「投資原則声明(SIP)」の中で、ESGを考慮した結果となるデフォルト投資戦略の用意及び更新を義務化する

2020年10月から施行

  • 「投資原則声明(SIP)」及び「加入者観点声明」の内容の実行結果を公表する声明を策定し、ホームページ上で公表する


(出所)英労働年金省

 前回の法案内容からの変更点では、2019年10月から、「投資原則声明(SIP)」とは別に、職域年金基金の加入者のESGに関する関心事項を記載した「加入者観点声明(statement on member’s views)」の策定及び公表を義務化するという内容があったが、反対の声が多く、加盟者の意見だけでなく、社会や環境へのインパクトを踏まえた上での方針を任意で策定してもよいという内容に改められた。

 また、パブリックコメントの過程では、「投資原則声明(SIP)」の中に記載するESG内容について、「気候変動を含む」と明言されていることに対する反対意見が業界団体からもあがった。背景には、ESGを考慮することには賛成するものの、「気候変動」だけを格別取り上げ縛られることを避けたい思惑があった。しかし、政府最終ルール案では、原案を貫いた。

 また、当初は社会的インパクト投資に関する方針策定を要求する意見もあったが、今回の最終案でもその内容は盛り込まれず、広くESG考慮の中で個別の年金基金の判断に委ねられることとなった。

【参照ページ】Pension trustees: clarifying and strengthening investment duties
【文書】Clarifying and strengthening trustees’ investment duties

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株式会社ニューラル サステナビリティ研究所

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