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【アメリカ】「面積拡大に伴い風力発電量は低下」ハーバード大教授論文。気温上昇懸念も

 ハーバード大学ジョン・A・ポールソン工学・応用科学スクール(SEAS)のデビッド・キース教授らの研究グループは10月4日、今後米国で大規模風力発電所が建設された場合、米国大陸全体の平均気温が0.24℃上昇する可能性があるという論文を、学術誌「Environmental Research Letters」「ジュール」で発表した。同研究所は、風力発電は気候対応にとって非常に重要との見方を強調した上で、風力発電設置でも考慮すべき点があると伝えている。キース教授は、ハーバード・ケネディースクール教授も兼任している。

 今回の調査では、米国地質調査所が公表した米国内57,636台の風力発電機の位置データを活用し、米国の風力発電所411カ所と太陽光発電所1,150カ所の「電力密度(単位時間面積当たり発電量)」を計算。その結果、風力発電所は、面積の拡大とともに、電力密度が低下することを突き止めた。背景には、風力タービンの羽根が大気と相互作用することで周辺の大気速度が減速し、発電効率が落ちるためだという。

 一般的に風力発電建設時は、この減速効果を避けるため、一定の距離を置いて風力発電機が設置されているが、今後風力発電面積が拡大すると影響を受ける模様。従来の研究では、この規模拡大による電力密度低下の効果が考慮されておらず、米エネルギー省や気候変動に関する政府間パネル(IPCC)の発電量予測よりも実績が低くなるだろうとした。一方、太陽光発電については、面積拡大に伴う電力密度低下傾向は見られなかったが、以前の予測よりも電力密度は低いことがわかった。

 キース教授らによると、今回得られた電力密度シミュレーションをもとに、全米の全電力需要を太陽光発電や風力発電で賄おうとすると、従来の予測よりも5倍から20倍の用地面積が必要となる。またそれを実現した場合には、風力発電所付近の表面温度は0.24℃上昇し、夜間では1.5℃ほどまで上昇するという測定結果が得られた。風力発電による温度上昇は、風力タービンが地表近くの大気を活発に混合し上昇させるともに、地表面の水蒸気を上空に吸い上げてしまうことによるもの。実際に、米国の風力発電所の近くで気温変化を観測した先行研究や、テキサス州北部での衛星を利用した観測からも、気温上昇の結果が得られている。

 キース教授らは、シミュレーションしたような規模の風力発電が米国で実現する可能性は低いとしつつも、風力発電付近の気温上昇には警鐘を鳴らした。

【参照ページ】The down side to wind power
【参照ページ】Observation-based solar and wind power capacity factors and power densities
【参照ページ】Climatic Impacts of Wind Power

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株式会社ニューラル サステナビリティ研究所

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