国際的な自然保護団体である国際自然保護連合(IUCN)は11月14日、絶滅危惧種をリストアップした「IUCNレッドリスト」で、マウンテンゴリラが「近絶滅種(CR)」から「絶滅危惧種(EN)」に、ナガスクジラが「絶滅危惧種(EN)」から「危急種(VU)」に、それぞれ一段階緩和された。保護活動が功を奏し、個体数の回復が見られたため。一方で、魚種については、乱獲により、絶滅危惧の恐れが一層高まっている。
マウンテンゴリラは、アフリカのコンゴ民主共和国、ルワンダ、ウガンダの山林部に集中して生息しており、2008年に「レッドリスト入り」。当時の個体数は約680だったが、2018年調査では1,000以上にまで回復していることがわかった。背景には、罠の撤去等の密猟パトロールや獣医介入が功を奏したため。但し、生息地の山林は人による農地拡大により侵食されており、密猟、紛争、呼吸器系やエボラ出血熱等の人が持ち込んだ伝染病等により、マウンテンゴリラに対する脅威は引き続き高いとした。また、近い種であるヒガシゴリラは引き続き「近絶滅種(CR)」のまま。
ナガスクジラは、1976年からの北太平洋や南半球での商業捕鯨の禁止により、1970年代から個体数が2倍の約10万頭にまで回復したと判断した。近い種のコククジラも同様に個体数回復が見られ、「近絶滅種(CR)」から「絶滅危惧種(EN)」に緩和された。2016年の国際捕鯨委員会で、日本、ロシア、韓国、米国、メキシコが「西部太平洋コククジラ個体群の保全措置に関する協力覚書」に署名したことも大きいとしている。但し、引き続き捕鯨や石油・ガス資源開発がコククジラの脅威になっている。
一方、魚種の絶滅危惧では、アフリカのマラウィ湖の458魚種のうち9%が絶滅の高いリスクにあり、地元の食料安全保障にも影響を与えている。現地で食されているチャンボ類全4種のうち3種が今回、「近絶滅種(CR)」に指定。ヴィクトリア湖流域でも同様に特産淡水魚全種の4分の3が脅威に晒されている。ハタ類の全167種についての初めての評価の結果、13%が過剰漁獲により絶滅危惧となっていることもわかった。
木材で今回、アフリカローズウッドに属するヴェネ(Vene)が「絶滅危惧種(EN)」に指定された。アフリカローズウッドは、西アフリカや中央アフリカが原産だが、家具、床材、建設用資材等で世界的に需要が急増。2009年から2014年の間に輸出量は15倍に増加。特に中国での需要が高まっている。密貿易も横行しており、トーゴでは2008年に約4分の1のアフリカローズウッドが違法伐採だという。
アクイラリア属に属する沈香は初めて調査対象となり20種のうち13種が絶滅と判定。これも密貿易が横行している。インドネシア・スマトラ島原産で世界最大の花として有名なショクダイオオコンニャク(Titan Arum)も始めて調査され、「絶滅危惧種(EN)」に指定。メキシコゴファーガメは、「絶滅危惧種(EN)」から「近絶滅種(CR)」に強化された。
【参照ページ】Fin Whale, Mountain Gorilla recovering thanks to conservation action – IUCN Red List
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