2018年から施行されたEU非財務情報開示指令(NFRD)の企業実践状況をモニタリングする欧州の複数NGOのイニシアチブ「Alliance for Corporate Transparency」は2月8日、エネルギー・資源採掘、情報通信、ヘルスケアの3セクターで合計105社の初年度の実践状況を分析した結果を発表した。
NFRDは、2018年会計年度以降の年次報告の中で、環境、社会(労働と地域社会)、人権、腐敗防止の4項目について、方針、実績、主要なリスク、KPI、サプライチェーン・デューデリジェンス等を開示することを義務化した。適用範囲は、従業員500人以上の上場及び非上場企業で、該当企業数は約6,000社。具体的に開示しなければ詳細情報については、例示はされているが、規定はされていない。
Alliance for Corporate Transparencyは、弁護士NGOのFrank Boldがコーディネーターを務め、Sustentia、ビジネスと人権情報センター(BHRRC)、トランスペアレンシー・インターナショナル、世界自然保護基金(WWF)、ClientEarth、CDP等のNGOが参加。ロンドン大学シティ校のキャスビジネススクールも学術面で協力。ノボノルディスク、レプソル、SAP、ボーダフォンは実証テスターとして協力した。活動の趣旨は、企業約1,000社の履行状況をモニタリングし、政府及び企業へ状況をフィードバックするで、3年間の活動期間の1年目となる今年は、まず105社をチェックした。
今回の調査からは、気候変動に関する情報を開示していた企業は90%と高かったが、ポリシー設計のゴールと道筋を明確にしている企業は47%しかなかった。二酸化炭素排出量の多いエネルギー・資源採掘企業では、2℃シナリオへの移行に向けた報告をしている企業はわずか26%で、さらに短期と長期双方での目標まで報告している企業は21%と少なかった。
水消費については、エネルギー・資源採掘企業では74%、ヘルスケアでも70%が開示しているが、水希少性の高い地域での水消費にまで言及している企業は24%と少なかった。輸送での大気汚染を報告している企業も20%しかなかった。生物多様性では、74%がポリシーについて記述していたものの、事業活動に関連する特定の生物多様性を開示しているエネルギー・資源採掘企業は39%で、具体的なインパクトまで開示していたのはわずか11%だった。
社会観点では、差別禁止や機会均等に関するポリシーについての記述していた企業は80%あったのに対し、ポリシーの実効性について開示したのはわずか36%。業務委託従業員については、人数開示は25%、差別禁止、機会均等、団体交渉権、給与状況まで開示している企業はさらに少なく5%だった。発展途上国を中心した欧州域外での賃金や機会均等状況を報告していた企業も少なかった。
人権では、人権尊重のポリシー言及は90%以上と非常に高かく、サプライチェーンでの人権にまで記述した企業も70%あったが、具体的な人権デューデリジェンスとなると開示率は36%に落ち、実効性のあるマネジメントに向けたアクション例やKPI開示も10%と非常に少なかった。人権監査についても、実施報告をした企業は58%あったが、監査結果まで開示したのは25%、結果を踏まえたアクションまで開示したのは16%。
腐敗防止では、詳細分野でのコミットメント開示において、賄賂は91%、内部監査プロセス76%、研修制度75%、贈物ルール73%。しかし、取引先への腐敗防止となると69%、代理店・コンサルティング企業・仲介業者への腐敗防止となると43%と低かった。ロビー活動費やロビー活動団体の政策内容まで報告している企業は10%だった。
【参照ページ】Companies failing to report meaningful information about their impacts on society and the environment
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