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【アイスランド】政府、2023年まで約2千頭の商業捕鯨方針発表。経済効果や資源量算定には国内からも反論

 アイスランドのクリスチャン・トール・ユーリウソン漁業・農業相は2月19日、2018年から2023年までの期間、毎年ナガスクジラを最大209頭、ミンククジラを最大217頭、捕鯨許可すると発表した。同省報道官は声明で、捕鯨許可は資源量が十分な種類だけを対象にした言及し、資源量の観点でも問題がないとの見方を示した。

 アイスランドは、商業捕鯨を禁止している国際捕鯨委員会(IWC)の加盟国だが、商業捕鯨を強行的に継続している。最近では、漁業・農業省が2013年、2018年まで商業捕鯨を方針を定め、今日まで実施してきた。しかし一方、捕鯨に対する批判も多く、2018年8月には、アシスランド環境NGOのLandverndのCEOだったグズムンドゥル・インギ・グズブランドソン環境・天然資源相からも、捕鯨推進政策の再考を検討する考えも示されていた。2018年夏に実施された国内世論調査でも、捕鯨賛成と捕鯨反対、中立がほぼ3分の1ずつで拮抗している状況だった。こうした中、捕鯨推進派ともいわれる産業・イノベーション省が、アイスランド大学経済学研究所に委託し捕鯨の経済効果を測定することを決定。そして2019年1月15日に報告書が公表された。

 同報告書では、捕鯨による経済効果とホエールウォッチングによる経済効果の比較や、捕鯨を続けることによる外国人観光客減少の可能性、鯨やその他の魚の資源量評価等が行われた。その結果、捕鯨売上は1,410万米ドル(約15.6億円)、ホエールウォッチング売上は1,340万米ドル(約14.8億円)と算定。双方とも市場規模は小さいものの、ホエールウォッチングの数が増えれば鯨が進路を変更し、ホエールウォッチングできなくなるかもしれないため規制強化が必要と指摘し、捕鯨を続けても外国人観光客は減少しないと結論づけた。ちなみに2009年から2017年までのナガスクジラ捕鯨量は699頭で、多くが日本に輸出されている。ミンククジラは2016年だけで46頭捕鯨された。アイスランドは捕鯨企業が2社ある。

 同報告書はまた、生態系への影響については、捕鯨を続けても鯨は持続可能と指摘。さらに、鯨は大量の魚を捕食するため、捕鯨は周辺の魚の資源量を増加させることにつながるという意見も展開。それにより漁獲量が増え、約1.08億米ドル(約120億円)の漁業収入増が見込めるとした。さらに、環境保護色が強くなるホエールウォッチング業界を「テロリスト団体」と呼称し、露骨な敵対姿勢を見せた。

 そのため同報告書発表後、報告書に対する反発が殺到。テロリスト団体と呼称されたホエールウォッチング協会はしっかりとしたヒアリングを受けていないと結論の前提となる調査方法の不備を指摘し、捕鯨賛成の「プロパガンダ」文書だと非難。環境NGOのLandverndも、生態系評価は門外漢の経済学者が実施しており生態系学者から見ると曖昧な前提が多いことや、ホエールウォッチング業界や環境団体を「テロリスト」と呼ぶ姿勢からは客観的な分析を欠いていると伺えることから、アイスランド大学に同報告書を撤回し、再度分析をしなおすよう要求した。グズブランドソン環境・天然資源相も、環境団体はテロリストだとは思わない、同報告書が捕鯨によって他の魚の資源量が増加する等の分析には疑念を覚えるという見解を示した。

 捕鯨継続を決めた今回の決定に際し、漁業・農業省は、ナガスクジラの資源量は1987年以降回復しており、北・中大西洋の資源量は2015年に約37,000頭となり、1987年から3倍になったと発表。また、アイスランドの海洋・淡水研究所(MFRI)が2018年4月に発表した報告も根拠にしながら、捕鯨を続けても持続可能とした。しかし、当のMFRIの報告書では、「ミンククジラは2001年まで資源量が回復したがその後減少している」「2018年から2025年までのミンククジラの捕鯨量は年間217頭が限界」と楽観的な内容にはなっていなかった。今回、捕鯨が魚の資源量を増やすとしたアイスランド大学の分析についても、MFRIは「私たちが提言した内容からは著しく飛躍している」と否定的な見方を示した。

【アイスランド大学報告書】Þjóðhagsleg áhrif hvalveiða
【MFRI報告書】HREFNA – COMMON MINKE WHALE
【参照ページ】Due to the whaling report of the Economic Institute of the University of Iceland
【参照ページ】Hvalveiðar dragi ekki úr ferðamannastraumi
【参照ページ】Segir lítið gert úr náttúruverndarsamtökum
【参照ページ】Undrast hryðjuverkaumræðu um náttúruvernd
【参照ページ】Report on Economic Impact of Whaling Incites Criticism
【参照ページ】Whaling in Iceland Betrays a Lack of Governmental Policy Consensus
【参照ページ】ICELANDIC WHALING REPORT RAISES CONCERNS

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株式会社ニューラル サステナビリティ研究所

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