米ESG投資運用専業ボストン・コモン・アセット・マネジメントは11月、世界大手銀行・証券会社57社に気候変動テーマでエンゲージメントした結果をまとめたレポートを発表した。
同社は最近、約2年毎に同様の結果レポートを発表。調査分析では、ESG投資推進NGOの英ShareAction、カナダSHARE、オーストラリアのオースタリア倫理投資等が協力している。同社による銀行大手へのエンゲージメントは、他の機関投資からも支持を集めており、前回の2017年の際には100社以上、合計運用資産総額約2兆米ドルの支持が集まった。
今年は、気候関連財務情報開示(TCFD)ガイドラインに基づき、気候変動対応状況を質問。特に、気候変動戦略、リスクアセスメント、事業機会の3つに焦点を当てた。今年は59社のうち47社が回答し、回答率は88%。日本企業では、三菱UFJフィナンシャル・グループ、三井住友フィナンシャルグループ、みずほフィナンシャルグループ、野村ホールディングス、オリックスの5社が対象となり、野村ホールディングスを除く4社が回答した。非回答の企業については、公開情報のみを用いて判断した。
59社全体のうち97%は気候変動に関する協働を行い、95%は気候変動に関するガバナンスも導入していると回答したものの、企業グループ全体で実際に気候変動戦略を導入しているところは58%にとどまった。所属している業界団体がポリシー策定等で後押ししてくれている企業も41%と半数を切った。
リスクアセスメントでも、二酸化炭素排出量の多い業種へのダイベストメントポリシーを開示している企業は71%あったが、実際に投融資企業に同テーマでエンゲージメントしている企業は53%と少なく、シナリオ分析等のリスクアセスメントを実施している企業も49%しかなかった。
事業機会については、95%が低炭素関連の製品・サービスを対外的にも打ち出しているが、当該製品・サービスが高いサステナビリティ基準を満たしているかを第三者機関がチェックしている企業は34%しかなく、当該製品の定量目標を張っている企業も46%だった。
同社は、銀行業界にはまだやるべきことが多いと結論づけた。
【参照ページ】Banking on a Low-Carbon Future
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