アマゾンとIBMは、新技術として注目されていたAI(人工知能)活用の顔認証技術に関する自主規制を発表した。5月25日にミネアポリス近郊で警察官による拘束中に46歳のアフリカ系米国人ジョージ・フロイド氏が死亡した事件で、警察に対する人権侵害に加担しないようにする狙いがあるとみられる。
アマゾンは6月10日、同社の顔認証技術「Rekogniction」の警察での利用を1年間停止すると発表した。政府に対し、顔認証技術の倫理的な活用を管理するための強力な規制を導入すべきと表明し、連邦議会が同問題に対して動き出すことに期待感を示し、同社の1年間の停止の期間は、連邦議会が適切なルールを制定するのに十分な時間だろうと伝えた。
アマゾンの顔認証技術に関する人権問題については、2019年前半から大きな関心を呼び、同年の株主総会では顔認証技術を政府機関に販売することを禁止するよう求める株主提案まで提出された。しかし同社取締役会は、同株主提案に反対するよう推奨したこともあり、投票結果は賛成が2.4%に留まった。翌年以降に再度提案するのに必要な5%にも満たなかった。また顔認証技術の使用での人権アセスメントを要求する株主提案でも賛成は27.5%だった。
【参考】【アメリカ】アマゾン、顔認証技術Rekognitionの政府販売で株主議決権闘争。5月22日に決着(2019年4月27日)
アマゾンは、一貫して顔認証技術の事業を継続する姿勢を見せていた中での、今回の使用自主停止は、それだけ事態を重く見たものといえる。今回の発表では、ヒューマントラフィッキング問題で活動しているThorn、行方不明児童及び搾取被害児童問題対策国際センター(ICMEC)、Marinus Analyticsについては、引き続き使用を認めると言及し、公権力以外については使用してもよいとの立場を明確にした。
IBMのアルビンド・クリシュナCEOは6月8日、連邦議会に対し、政策提案を記した書簡を送付。警察に対し、説明責任を果たすことを要求するとともに、同社の顔認証技術の使用を今後禁止すると発表。同時に、大量監視、人種プロファイリング、基本的な人権侵害や自由権侵害、同社の価値観や「信頼と透明性原則」に反する形での用途に関し、顔認証技術を含む全ての同社のテクノロジーの使用も禁止すると発表した。また、顔認証技術をどのように規制していくかについての国民的議論が必要なときだと伝えた。
顔認証技術については、世界経済フォーラム(WEF)でも、規制フレームワークの整理が進められている。
【参考】【国際】世界経済フォーラム、顔認証システム規制フレームワーク発表。行動原則原案も。フランス主導(2020年3月11日)
【参照ページ】We are implementing a one-year moratorium on police use of Rekognition
【参照ページ】IBM CEO’s Letter to Congress on Racial Justice Reform
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