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【日本】人権NGO、日本企業7社のミャンマー人権違反指摘。日本政府にも対応改善要求

 国際人権NGOヒューマンライツ・ナウ(HRN)は4月2日、国連ビジネスと人権に関する指導原則(UNGP)の観点から、ミャンマーでの日本企業の人権侵害状況を分析したレポートを発表した。東芝、小松製作所、キリンホールディングス等7社の違反事例をまとめている。

 HRNは今回、「人・社会に対して多大な影響力を持つ企業は、人権尊重の責任を果たすために様々なステークホルダーと協働しながら、指導原則に従って、自社だけではなく、そのサプライヤーや投資先などサプライチェーン・バリューチェーン全体に対して自社の影響力を行使し、人権侵害を助長しないよう積極的に問題に対処することが求められる」としつつ、日本企業の改善の余地は大きいと指摘。今回7社の違反事例を詳述した。

 違反事例として紹介されたのは、東芝、小松製作所、キリンホールディングス、TASAKI、Y Complexプロジェクト、住友商事、KDDI。日本企業向けの提言として、3つを求めた。

  • バリューチェーン上の労働者の十分な安全確保・権利保護が保障される基準・ガイドラインの策定・実施と労働者・経営者の人権意識の改善、及び独立的な第三者機関による中立的な調査・監査
  • 人権デューデリジェンスの即実施と人権リスクの特定
  • 人権デューデリジェンスの過程で、バリューチェーン上での人権侵害リスクないし人権侵害が確認された場合、日本企業は、情報を公開するとともに、ステークホルダーとのダイアログの実施など透明性のあるプロセスによって人権侵害に繋がる状況の徹底した改善を行い、人権リスクを回避するとともに、人権侵害を助長しないようにしなければならない。それが不可能な場合には、事業を撤退すべきである。とりわけ国軍と現地企業との繋がりが特定され、業務提携から生まれる利益が国軍に裨益する懸念が生じた場合には、一切の事業展開を取り止めるべきである

 HRNは今回、日本政府に向けても、6つの提言を行った。

  • 指導原則に基づき、サプライチェーン、事業提携、投資上の人権リスクに対応することを企業に求める法制度について早急に検討を進めること。また、NAPでも述べるとおり、少なくとも指導原則にしたがって企業に求める人権デューデリジェンスに関するガイドラインなどを作成するなどして、企業への期待が具体的に実施されるよう必要な施策を導入すべきである
  • 人権問題への効果的な救済措置の一環として、自国の企業が関与した人権侵害に対する調査と事案に応じた対処(行政処分及び刑事処分を含む)を積極的に行うべきである
  • 国連やその他の国際的なプロセスの支援の下、武装した人権侵害を行う集団との関与のための人権ガイドラインを策定すべきである
  • 国際社会において特に高い人権リスクが指摘されている国・地域に事業上関わっている自国の企業に対し、当該国における人権リスクについて十分な情報提供を行うべきである
  • 平和・安全問題を扱う国際機関・団体が提案する、企業が取り組むべき人権尊重のためのプロセスに積極的に協力し、ビジネス上での人権尊重を促進するよう奨励すべきである
  • 国・地域を問わず、自国の企業が事業展開に関連して人権侵害に加担しないよう法規制も含め、実効的な政策を実施すべきである

 HRNはまた同日、3月30日に在日ミャンマー市民協会と共同で日本政府に提出した公開質問状に関し、緊急院内集会を開催し、外務省と法務省から得た回答を公表した。院内集会では、在日ミャンマー人からも日本政府の回答について、曖昧、不十分、失望等の声が多く聞かれたという。

 加藤勝信官房長官は3月31日、記者会見の中で、ミャンマーに対する政府開発援助(ODA)について、国軍がクーデターで権力を掌握して以降は、人道目的のものを除き、新たに決定した案件はないことを明らかにしている。しかし4月2日の茂木敏充外相の記者会見では、「事態の推移や関係国を注視しながら、どういった対応が効果的かよく考えていきたい」と述べるにとどめた。ミャンマーのチョー・モー・トゥン国連大使は、日本経済新聞の取材に対し、「民政が回復するまでの間、日本はミャンマーへの投資を中断するべきだ」と述べている。ミャンマー国軍は2月27日、チョー・モー・トゥン国連大使を解任しているが、チョー・モー・トゥン国連大使は、自身が正当な大使と主張し、今でも国連で業務を続けている。

 さらにHRNは同日、他の9団体とともに、ミャンマー市民の人権を守るためのアクションを外務省に求める共同声明も発表した。共同声明には、312団体が賛同。その中には、ヒューマン・ライツ・ウォッチ(HRW)、ACE、アムネスティ・インターナショナル日本も含まれる。

 共同声明での外務省への要求は2つ。まず、ミャンマー国軍に対し、平和裏に抗議する市民への人権侵害行為の停止を即刻求め、アウンサンスーチー氏、国民民主連盟(NLD)関係者、及び不当に逮捕、拘束された人々の解放を求める声明を発表し、日本政府がさらにそのことをミャンマー国軍に対して要請すること。そして、ミャンマー市民の生活に直結する事業や人道支援、医療支援をさらに強化し、その他の日本の政府開発援助ODAについては、継続中の案件も含めて直ちに停止すること。今後、日本政府の対応に注目が集まる。

【参照ページ】【報告書】ミャンマーの人権侵害と日本企業の関与と責任 ~ビジネスと人権に関する指導原則の観点から~
【参照ページ】【報告】ミャンマー情勢認識&対応方針に関する公開質問状を提出しました。
【参照ページ】【ご報告】ミャンマーのクーデーターに関する日本政府からの回答
【参照ページ】茂木外務大臣会見記録
【参照ページ】【お知らせ】ミャンマー市民の人権を守るためのアクションを求める共同声明を外務省に提出致しました

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株式会社ニューラル サステナビリティ研究所

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