【国際】新型コロナウイルス感染症ワクチンの意義 〜効果とメリット・リスク〜 2021/08/11最新ニュース

【国際】新型コロナウイルス感染症ワクチンの意義 〜効果とメリット・リスク〜 1

 日本では現在、ファイザーとモデルナが予防接種法における接種の対象となっている。今回の記事ではファイザーとモデルナが開発しているmRNAワクチンを対象に、ワクチン接種の効果やメリット・リスクをみていく。

ワクチン接種の効果?

 ワクチンを接種するにあたっての効果は様々な報告書で発表されている。その中でも最大規模とみられるのがイスラエルが出した報告だ。この研究ではファイザーとモデルナが使用しているmRNAワクチンを接種したグループと非接種グループに分け、非接種グループで発生した感染者数、発症者数、入院者数と重症化数を各タイムスパンに分け以下の表で算出した。

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(出所)「BNT162b2 mRNA Covid-19 Vaccine in a Nationwide Mass Vaccination Setting」のデータをもとにニューラル編集部作成

 表から見るとワクチンを一回接種している人の予防効果率はだいたい45%から60%の間だ。二回接種している人は感染予防率、発症予防率、重症化予防率では90%以上を確定していることがわかった。他の報告書でも90%以上の予防効果が出ているためワクチンを一回ではなく二回打つ重要性が見える。

追加接種は必要か?

モデルナ社の推奨

 モデルナは8月5日、コロナワクチンの3回目の追加接種が冬の前には必要になる可能性が高いと告げた。モデルナは今年5月、2月に開発を始めたブースターショットの接種では、ベータ株とガンマ株に対する免疫が増加したと発表した。さらに3回目の追加接種は、最初の2回ワクチン接種を受けた接種者とほぼ同等の抗体反応が得られることがわかった。

 しかし、モデルナのステファン・バンセルCEOは、当該データはデルタ株の前に収集されたものであるため、結果が変わっている可能性があると述べ、ワクチンの効果に影響を与えると告げている。

 さらに、デルタ株とマスク着用による疲労、寒くなるにつれて人々が屋内に移動することなどが重なると、「ワクチン接種者の画期的な感染が増加することを理由に冬のシーズン前に3回目のブースターが必要になる可能性が高い 」と述べている。

WHOとCDCの推奨

 一方、世界保健機関(WHO)のテドロス事務局長は8月4日、裕福な国と貧しい国でのワクチン接種の格差が広がる中、少なくとも9月末まではコロナワクチンの追加接種を中止するよう発表した。急速に蔓延しているデルタ株に対抗するため、各国が予防接種の必要性を検討している中での一時停止の呼びかけはWHOによるこれまでで最も強い声明となった。

 WHOによると、裕福な国では、5月に100人あたり約50回の接種が行われている一方、低所得国では、供給不足のため、100人あたり1.5回の投与しかできていない。またWHOは、12月までに世界のワクチン接種率40%を目標とし、2022年半ばまでに世界の70%にワクチンを接種することを達成するため、ワクチン接種率の高い国が声明要請に応じ、ワクチンの不公平さをなくすための呼びかけに応じるよう求めた。

 また、米国疾病管理予防センター(CDC)は、コロナウイルスの亜種から身を守るためには、ブースターショットは必要ないと主張している。CDCの医療従事者向けワクチンガイダンスでは、2回の接種のうち2回目の接種から2週間後に患者は完全に保護されるとし、「現時点では追加接種は推奨されない」としている。

変異株への効果

デルタ株

 デルタ株に対し、WHOは、ファイザー/BioNTechとアストラゼネカのワクチンには、重症予防効果があることがデータで示されていると発表した。しかし、デルタ株によって引き起こされる軽度の症状のある病気に対しては、ワクチンによる予防効果が低い可能性があることも認めている。

 一方で、ワクチンの2回接種者には、「デルタ型に対する有意な防御効果を維持している」という研究結果もある。英国公衆衛生局(PHE)が発表した、ファイザー製ワクチンを実際に接種した後の状況をもとにした研究結果によると、発症予防のワクチン有効率は、B.1.1.7(アルファ株)が約94%、B.1.617.2(デルタ株)が約88%だった。また、デルタ株による入院予防効果は約96%。しかし、実際の臨床現場におけるこのような観察研究は、流行状況などの他の要因が結果に影響を及ぼす可能性があり、バイアスがかかりやすいと言えるためより多くの現実的なデータが必要だという。

ラムダ株

 南米で確認された新たな変異株「ラムダ株」に関するワクチンの効果や危険さについては、まだ定かではないが、WHOは「ラムダには、伝達性が高まる可能性や中和抗体に対する耐性が高まる可能性など、表現型への影響が疑われる変異が多数存在する」と発表している。コロナウイルスは今後も変異していく可能性はあるが、WHOは今のところワクチン接種が最善の防御策であると考えている。

ワクチン接種で外出できるようになるのか?マスクなしでよくなるのか?

 厚生労働省によるとワクチンを接種した人から他人への感染をどの程度予防できるかはまだ分かっていないため、感染予防対策(マスクの着用も含め)を継続するよう要請している。

 他国では、人口の60%が完全にワクチン接種を終わっているイスラエルなどは、4月に屋外でのマスク着用の義務が解除された。実際にイスラエルのコロナ感染者数のグラフを見ると、4月から順調に減少していた。しかし、7月中旬から上昇し、半数以上の人が完全にワクチンを接種しているイスラエルにも関わらず、コロナ変異株などを理由にコロナ感染者が急増する可能性が十分あると示している。そのため、ワクチン接種後でも、感染率を減速するにはマスクの着用と外出の控えが重要になる。

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ワクチン接種のリスクとメリット

 CDCは、ワクチン摂取のメリットとリスクの評価では、メリットは潜在的なリスクをはるかに上回ると結論づけている。調査では性別と年齢に分けて発生するメリットとデメリットを発表した。

 CDCが出した表によると、mRNAワクチンによる唯一の重度なリスクは心筋炎。しかし、心筋炎になるリスクは極めて稀。1回目のワクチン接種後は100万回あたり4.4件、2回目のワクチン接種後は100万回あたり12.6件と推定。また、女性よりも男性の方が、発生頻度が高いことが報告されている。

【国際】新型コロナウイルス感染症ワクチンの意義 〜効果とメリット・リスク〜 4(出所)COVID-19 Vaccines in Adults: Benefit-Risk Discussion

 一方、メリットに関しては、米国国勢調査局と全米健康統計センターが2021年1月から5月にかけて実施した連邦政府の調査によると、ワクチンを接種することは、人々の健康と幸福の向上に役立つとの結果があった。例えば、少なくとも1回のワクチン接種を受けた人の30%がストレスを感じていると回答したのに対し、ワクチン接種を受けていない人の43.2%がストレスを感じていると回答した。さらに、1月から5月までのすべての2週間の平均で、ワクチン接種率がより急速に上昇した州では、ストレスを感じた人の割合が減少していることがわかった。

 予防接種率の上昇幅が大きいほど、メンタルヘルスの改善効果も大きいと証明されている。以下のグラフでは、各州の予防接種率を10%刻みでグループ化し、2021年1月から5月までの2週間の間に,各州の予防接種率が平均してどのくらい上昇したかによって,0、1、2、3の4つのグループに分類。グラフをもとに、米国国勢調査局は、予防接種率が向上した場合、メンタルヘルスの改善は、2倍から5倍になっていると分析している。

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(出所)「The Economic Benefits of Vaccinations」のグラフを翻訳

 また、国際通貨基金(IMF)の世界経済見通しでは、世界の主要10カ国(カナダ、フランス、ドイツ、日本、カタール、韓国、スウェーデン、アラブ首長国連邦、英国、米国)において、ワクチンへの迅速かつ公平なアクセスを確保することで得られる経済効果が算出されている。同報告書によるワクチン接種シナリオの予測をもとに分析した結果、世界経済の活性化により、2020年から2021年には、少なくとも1,530億米ドル、2025年には4,660億米ドルの経済効果が得られることがわかった。これは、コロナ検査・治療・ワクチン開発と流通の迅速化を目標とした国際プログラムである「Access to COVID-19 Tools(ACT)Accelerator」の推定コスト380億米ドルの12倍にあたる。

世界中の人がワクチンを打ち終わったらどんないいことがあるのか?

 コロナウイルスに対する集団免疫の閾値に到達するためには、人口のおよそ70%から85%が、ワクチン接種を受ける必要があると言われている(但し、パンデミックの段階に応じて変化する可能性が高い)。対照的に、インフルエンザでは、集団免疫の閾値に達するには335から44%の接種が必要とされている。現在の世界のワクチン接種率はまだ15.4%。安全で効果的なワクチンを打ち集団免疫を獲得することが希求されている。

【参照ページ】Weekly epidemiological update on COVID-19 – 6 July 2021
【参照ページ】Overnight Health Care: Moderna says booster likely needed before winter
【参照ページ】WHO asks wealthy nations to hold off on Covid vaccine boosters at least through September
【参照ページ】Moderna recommends third shot of vaccine to defend against new coronavirus strains
【参照ページ】WHO calls for halting COVID-19 vaccine boosters in favor of unvaccinated
【参照ページ】Effectiveness of Covid-19 Vaccines against the B.1.617.2 (Delta) Variant
【参照ページ】Here’s what you need to know about the lambda Covid variant
【参照ページ】「新型コロナワクチンQ&A
【参照ページ】Israel, a world leader in vaccinations, lifts its outdoor mask mandate.
【参照ページ】How Much of the Population Will Need to Be Vaccinated Until the Pandemic Is Over?
【参照ページ】COVID-19 Vaccines in Adults: Benefit-Risk Discussion
【参照ページ】The Economic Benefits of Vaccinations
【参照ページ】Equal access to COVID-19 vaccines could be worth billions

著者プロフィール

氷室 壮一朗

株式会社ニューラル ESGリサーチャー

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