経済産業省は5月13日、「人材版伊藤レポート2.0」を発表した。2020年9月に公表した「人材版伊藤レポート」の内容を深堀りした。
人材版伊藤レポートでは、基本的コンセプトとして、「経営戦略と人材戦略の連動」「As is‐To be ギャップの定量把握」「人材戦略の実行プロセスを通じた企業文化への定着」の3つの視点と、「動的な人材ポートフォリオ、個人・組織の活性化」「知・経験のダイバーシティ&インクルージョン」「リスキル・学び直し」「従業員エンゲージメント」「時間や場所にとらわれない働き方」の5つの共通要素を「3P・5Fモデル」として提唱した。
今回の「人材版伊藤レポート2.0」は、「3P・5Fモデル」の内容を詳述する形でレポートの内容を整理した。企業・個人を取り巻く環境が大きな変化している状況で、持続的な企業価値創造のためには、経営陣の一人として「CHRO」を設置し、CHROが、人材戦略を自ら起案し、CEO・CFO等の経営陣、取締役と定期的に議論することを重視した。
また、動的な人材ポートフォリオ計画の策定のためには、「現時点の人材やスキルを前提とするのではなく、経営戦略の実現という将来的な目標からバックキャストする形で、必要となる人材の要件を定義し、人材の採用・配置・育成を戦略的に進める必要がある」とした。
その上で、将来の経営環境の不確実性が必ずしも高くなく、自社の立ち位置が比較的見通しやすい場合は、中長期的に必要な人材の質と量をできる限り具体的に定義すべきとした。
一方、見通しづらい場合は、前者単位での人材定義ではなく、「各事業で必要となる人材の質と量を、現場から離れた本社の人事部門が判断するのは現実的ではないため、事業部門が人材ポートフォリオの策定や人材の確保を主導する体制とする全社単位での定義に固執せず、その時点でニーズが明確な部分に焦点を当てて、現状とのギャップを把握すべき」とした。その場合のCHROや人事部門の役割は、「経営人材が中長期的に確保されるよう、人材ポートフォリオ計画や育成方針を起案する」とした。
これらを総合すると、変化の激しい現在では、多くの企業が将来の見通しは立てづらくなっており、事業人材は、事業部門が人材ポートフォリオ設計を主導し、経営人材はCHROが全社的に設計するものと提案しているといえる。
加えて、人的資本に関するKPIマネジメントを重視。役員報酬にも人材に関するKPIを反映することを提唱した。目指すべき姿(To be)の設定と現在の姿(As is)とのギャップの把握も定量的に行うべきとした。ジェンダー、外国人、スキルセットに関しても必要な範囲でKPIを活用すべきとした。
今回のレポートには、エクイティの概念は盛り込まれなかった。また、日本の人事制度の根幹の課題である職務資格制度(ジョブ型)と職能資格制度の相克や、グローバル組織マネジメントについての観点も盛り込まれなかった。
【参照ページ】「人材版伊藤レポート2.0」を取りまとめました
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