農林水産省は6月21日、日本の食料安全保障に関し、包括的な検証を実施した結果を公表した。「食料安全保障に関する省内検討チーム」を立ち上げ、リスク管理の国際規格「ISO31000」に準拠し、リスクを特定した。
対象リスクでは、国内リスク10種、海外リスク15種の計25種のリスクを洗い出した。具体的には国内リスクでは、「労働力不足・後継者不足」「農業者以外の関係人材・関係施設の減少」「荒廃農地・農地の転用」「需要変化」「需要急変」「サプライチェーンの混乱」「異常気象」「温暖化、高温化」「家畜伝染病・植物病害虫・魚病」「知的財産の流出」。
海外リスクでは、「供給量の減少」「価格の高騰」「品質の劣化」「燃油の輸入減少/価格高騰/品質劣化」「肥料原料の輸入減少/価格高騰/品質劣化」「種子の輸入減少/価格高騰/品質劣化」「種苗の輸入減少/価格高騰/品質劣化」「農薬の輸入減少/価格高騰/品質劣化」「動物用医薬品の輸入減少/価格高騰/品質劣化」「農業用機械の輸入減少/価格高騰/品質劣化」「包装用資材の輸入減少/価格高騰/品質劣化」「その他の生産資材等の輸入減少/価格高騰/品質劣化」「輸入原材料の減少/価格高騰/品質劣化」「国際環境への対応」「調達先の変更」。
今回分析した品目は、食料・農業・農村基本計画で、生産努力目標を設定している24品目に加え、食料産業4業種及び林業(木材)等を合わせた32品目。カロリーベースで98%をカバー。対象業種では、食品製造業、食品卸売業、食品小売業、外食産業を全て対象とした。25種と32品目のリスクマップも作成した上で、品目毎に起こりやすさを5段階、影響度を3段階で評価し、「重要なリスク」と「注意すべきリスク」を特定した。
輸入では、価格高騰のリスクは、輸入割合の高い主要な品目のうち、飼料穀物等では顕在化しつつあり、「重要なリスク」と評価。また、小麦、大豆、菜種では、起こりやすさは中程度だが、その影響度が大きく、「重要なリスク」とした。
輸入依存度の高い生産資材のうち、燃油の価格高騰等のリスクは、起こりやすさが高まっており、燃油費の割合が高い品目(野菜、水産物等)では「重要なリスク」。肥料の価格高騰等のリスクは、肥料は農産物の生産に必須で影響度は大きく、ほとんどの品目で「重要なリスク」となった。
温暖化や高温化のリスクは、ほとんどの品目で顕在化しつつあり、「注意すべきリスク」等と評価。家畜伝染病のリスクは、水際対策の強化を図っているものの、口蹄疫やアフリカ豚熱が近隣諸国で継続的に発生しており、起こりやすさが高まっていることに加え、発生した場合の影響度が大きく、「重要なリスク」となった。
国内生産では、労働力・後継者不足のリスクが、果実、野菜、畜産物等の労働集約的な品目を中心に起こりやすさが高まっているか、顕在化しており「重要なリスク」と評価。また、関係人材・施設の減少リスクは多くの品目で顕在化しつつあり、「注意すべきリスク」とした。
【参照ページ】「食料の安定供給に関するリスク検証(2022)」の公表について
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