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【国際】IPBES、生物多様性の危機に対応する政治・経済意思決定アプローチを提示。現状に苦言

 生物多様性及び生態系サービスに関する政府間科学政策プラットフォーム(IPBES)は7月11日、世界の生物多様性の危機に関する政治的・経済的な意思決定において、短期的利益と経済成長を重要視し、その他の複数の自然価値が排除されていることに警鐘を鳴らす報告書を発表した。

 IPBESは、94カ国の賛同を得て2012年に発足。日本も加盟しており、現在の加盟国数は139カ国。国連環境計画(UNEP)が事務局を務め、国連教育科学文化機関(UNESCO)、国連開発計画(UNDP)、国連食糧農業機関(FAO)も参画している。他の国連機関からの参画も常にオープンにしている。

【参考】【国際】人間活動により動植物100万種が絶滅危機リスク。気候変動も原因。国際機関IPBES報告(2019年5月14日)

 今回の発表では、経済的・政治的な決定において、食料の集中生産のような市場に基づく道具的な特定の自然の価値を優先させることが圧倒的に多いと苦言。自然の変化が人々の生活の質に与える影響を適切に反映してされていないことに加え、環境規制や文化的アイデンティティ等の非市場的価値も政策立案では見落とされているとした。
 
 IPBESがこれまでレビューしてきた1,000以上の研究では、50以上の評価手法やアプローチがあり自然の価値を可視化するツールは豊富。一方で、評価結果をステークホルダーに共有している研究は2%しかなく、評価プロセス全体にステークホルダーが関係している研究は1%程度。ステークホルダー間の情報格差を是正し、透明性を持って政策立案を行う必要があるとした。

 同報告書では、自然の多様な価値観を多面的に捉え、意思決定に役立てるよう自然に対する価値観を4つの類型に分類した。4つの類型は、「Living from:食料や物資など生活やニーズを維持するための資源としての自然の存在に重点を置く」「Living with:人間のニーズとは無関係に繁栄する川の中の魚の権利など、人間以外の生命に焦点を当てる」「Living in:人間の居場所やアイデンティティと紐づく自然の重要性について言及する」「Licing as:自然界を自分自身の肉体的、精神的、霊的な一部としてみなす」。

 また、様々な意思決定状況において評価プロセスを設計する5つのステップを示した。このステップは、「正当なプロセスへの投資」「目的設定」「スコープの明確化」「評価手法の選択と適用」「意思決定者へ評価結果、妥当性、リスクの伝達」で構成され、状況に応じて反復することが推奨された。

 より持続可能で公正な変革を実現するための条件として、「自然の多様な価値を認識する評価の実施」「意思決定への評価の組み込み」「自然の価値を含めた政策や規制への変革」「社会規範や目標の修正」の4つのレバレッジポイントも特定した。

 さらに、変革を実現するためのパスウェイとして「グリーンエコノミー」「脱成長」「アース・スチュワードシップ」「自然保護」の4つに注目。グリーンエコノミーが最も有力な実現戦略としてコンセンサスがあることを示しつつ、共通している自然の価値を重要視する考え方とそれ以外の戦略の価値を示した。

 意思決定への評価を組み込むための6つのガイドラインも示している。例として、カナダの核廃棄物管理組織が20年以上に渡り、先住民との協力や学習を行い、公開協議を行う透明性の高いプロセスと多種多様なステークホルダーをすべてのプロセスで巻き込んだことで成果を収めたことに言及した。

【参照ページ】Media Release: IPBES Values Assessment - Decisions Based on Narrow Set of Market Values of Nature Underpin the Global Biodiversity Crisis

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株式会社ニューラル サステナビリティ研究所

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