欧州委員会は9月28日、EU加盟国に対し、市民に最低限の所得を保証する「ミニマム・インカム」制度の拡充を要請した。現時点で加盟国で大きなばらつきのあるミニマム・インカム制度を各加盟国にレビューを求め、ある程度統一していく考え。今後EU理事会での議論を行い、EUとして各加盟国に対し報告義務及び勧告できる制度の確立を目指す。
ここでいうミニマム・インカム制度は、一定の所得水準までギャップを埋めるための現金給付型の社会保障制度を指す。類似の概念に「ベーシック・インカム」があるが、ベーシック・インカムの定義も識者の間で定まってはおらず、ミニマム・インカムをベーシック・インカムの一つとみなす議論もあれば、ベーシック・インカムは所得水準を問わず全市民に一律に定額が付与される制度を指すという議論もある。
EUは、政策目標として、2030年前に貧困層を1,500万人減らすとともに、20歳から64歳までの雇用率を78%にまで高めることを掲げている。その上で、ミニマム・インカム制度を、不況の中で市民を救済する制度とみなしつつ、労働市場に参加するインセンティブを同時に備えるものともしている。これにより、貧困の緩和、労働の奨励、持続可能な財政コストの維持の3つを実現していく考え。EUが政策として掲げるグリーン及びデジタルへの移行の実現にも資するとした。
今回の発表では、ミニマム・インカム制度の給付対象となる所得水準の定期的な見直しや、利用率の向上、女性や若年層への支給差別撤廃、申請から支給決定までの手続きを30日以内に完結、労働参加インセンティブの実効性等についてEUとして一定の水準を定めていく考え。特に所得水準の妥当性確認では、2030年末までにEUが掲げる適正水準を到達することを求めていく計画。
また今回の政策の肝は、女性、子供、低所得世帯などの異なる地理的地域や人口集団への影響を考慮する方法をEUがガイダンスとしてまとめるというもの。これにより、画一的な給付ではなく、必要性に応じた給付を重視することを明らかにした。
【産州ページ】Minimum income: more effective support needed to fight poverty and promote employment
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