気候変動に関する金融リスクを検討するための中央銀行・金融当局ネットワーク「気候変動リスクに係る金融当局ネットワーク(Network for Greening the Financial System;NGFS)」は6月9日、気候シナリオに関する公開フォードバック調査の結果を公表した。
【参考】【国際】NGFS、気候シナリオの開発深化に向け、幅広い関係者から意見募集。2月27日まで(2023年2月15日)
同調査の回答は、75カ国から213件あった。内訳は、金融機関が38%、中央銀行が30%、コンサルティング会社が9%。70%以上がNGFSシナリオを使用しており、主に自組織の気候変動リスク分析、マクロ・プルーデンス、ミクロ・プルーデンスの3つの目的で活用していた。また、ほぼすべての回答者が、NGFSシナリオは、グローバルな公共財であり、マクロ経済モデルや出力変数の数や関連性等、独自の特徴があり、強みがあるという回答した。
シナリオの活用状況では、57%がNGFSシナリオのみを使用しており、15%がNGFS以外の気候シナリオも使用していた。コンサルティング会社は、NGFSシナリオと非NGFSシナリオを組み合わせて使う傾向がある一方、金融機関や中央銀行の多くは NGFSシナリオのみを活用していた。NGFSシナリオに基づく分析をすでに実施した回答者の95%が、その結果に全体もしくは部分的に満足したと回答した。
NGFSの6つのシナリオのうち、回答者が最も利用していたのは、Net Zero 2050、Delayed Transition、Current Policiesの3つ。NGFSシナリオを活用した回答者の約半数は、NGFSシナリオの出力変数の結果のみを用いており、残りの半数は、分析の目的のために変数を適応させたり、新しい変数を追加していた。理由は、セクター毎の粒度を上げるため。
シナリオ分析のモデルでは、ほぼ半数が、複数のモデルを利用しており、REMIND-MAgPIEが最多。次いでNiGEMとGCAM。NGFSシナリオを利用する回答者の約70%は、統合評価モデル(IAM)が提供する遷移変数とNiGEMモデルが提供するマクロ金融変数が最も関連すると回答した。
NGFSは、次のバージョンとなる「フェーズIV」のシナリオを2023年末までにリリースする予定。特にセクター毎の粒度、短期シナリオ、物理的リスクの分野を改善する。また、複数年の作業プログラムとして、「シナリオの説明と更新」「短期シナリオ」「物理的リスク」「セクター毎の粒度」「コミュニケーションとエンゲージメント」の5つの優先分野を特定している。短期シナリオは、2023年秋に方向性を示すノートを発行し、その後、本格実装を開始する。
NGFSは5月31日には、金融機関の移行計画(トランジション・プラン)の策定状況と、ミクロ・プルーデンス当局との関連性を示した報告書も発表。移行計画は、ミクロ・プルーデンス上のリスク把握に資すると判断し、金融機関に移行計画の策定を求めていく考えを示した。また、移行計画の定義や対象範囲にばらつきがあるため、金融安定理事会(FSB)、バーゼル銀行監督委員会(BCBS)、保険監督者国際機構(IAIS)、証券監督者国際機構(IOSCO)等の基準策定機関が、移行計画に関する開示ルール整備作業を協調して進めるよう関与していくとした。
【参照ページ】NGFS publishes the results of its first public feedback survey on climate scenarios
【参照ページ】NGFS publishes a stock-take on Transition Plans
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