国際エネルギー機関(IEA)と世界銀行グループの国際金融公社(IFC)は6月21日、新興国・発展途上国(EMDEs)におけるクリーンエネルギー投資に対する民間資本の重要性を訴えた報告書を発表した。IEAは2023年5月、エネルギー投資の状況を分析した年次報告書「世界エネルギー投資2023」を発行している。
【参考】【国際】IEA、「世界エネルギー投資2023」発行。再エネ投資が大幅増傾向。課題は途上国(2023年5月30日)
今回の発表は、1.5℃目標の達成に向けてEMDEsにおけるクリーンエネルギーへの投資状況を分析したもの。EMDEsでは約7.8億人が電気を利用できず、24億人がクリーンな調理用エネルギーを利用できていない。目標達成に向けてクリーンエネルギーへの年間投資額を2022年の7,700億米ドル(約110兆円)から2030年には約3倍の2.8兆米ドル(約402兆円)にする必要があるとした。
この投資額を実現するためには、公的資本だけでは不十分であり、ブレンデッド・ファイナンスによる民間資本の増加の重要性を強調した。現在の民間資本によるクリーンエネルギーへの投資額は年間1,350億米ドル(約19兆円)だが、今後10年以内に約8倍の年間1.1兆米ドル(約158兆円)まで増加する必要がある。
同報告書では、EMDEsにおける技術、規制、財政面での国際的な支援を強化する必要性を訴えた。特に、規制の枠組み、エネルギー制度、インフラ、資金へのアクセスを強化する支援を行うことで、クリーンエネルギーへの投資を増加させる上で課題となるEMDEsの各国政府の初期投資を支援することが可能だとした。
水素、バッテリー、洋上風力発電、再生可能エネルギーによる海水淡水化プラント等の新技術を含むリスクの高いプロジェクトに対する譲許的なファイナンスの必要性も報告。2030年までに最大年間1,000億米ドル(約14兆円)の譲許的な資金が必要だと予測した。
また、EMDEsでのクリーンエネルギープロジェクトの規模と大手機関投資家が求める最低投資額のギャップを解消するために、業界ガイドライン、分類法やタクソノミー、第三者認証の強化を行うことでより多くのサステナブルボンド(ESG債)を発行できる可能性があるとした。
民間投資家の投資機会の拡大のため、EMDEsにおける政策を変革する必要性を訴えた。具体的には、化石燃料への補助金、時間のかかる認可プロセス、不明確な土地利用権、民間又は外国人の所有権の制限、不適切な価格設定等の課題を挙げ、健全な規制と政策、国際的な支援が重要だとした。
【参照ページ】IEA-IFC Joint Report Calls for Ramping Up Clean Energy Investments in Emerging and Developing Economies
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