経済産業省、エネルギー・金属鉱物資源機構(JOGMEC)、マレーシアのペトロナスの三者は9月27日、二酸化炭素の越境輸送・貯留に関する協力覚書を締結した。日本とマレーシアの2国間で炭素回収・貯留(CCS)事業の実現を目指す。
JOGMECはすでに6月、三井物産が検討しているマレーシアへの二酸化炭素越境輸送事業を「先進的CCS事業」して選定。積極的な支援を開始している。日本近海には二酸化炭素の貯留に適した海底が少ないと言われており、同案件では適地が豊富なマレーシアでの貯留を試みる。2028年の実施を目指す。
【参考】【日本】JOGMEC、先進的CCS事業7件選定。2030年度までに開始目指す。2023年予算35億円(2023年6月20日)
二酸化炭素の越境では、事業としてルール整備の他、二酸化炭素排出削減量の二国間での算出を調整する必要がある。そこで、経済産業省、JOGMEC、ペトロナスの三者で検討を深める。
ペトロナスはすでに2022年12月、韓国ポスコとの間で、マレーシアのサラワク地域でのCCS事業開発に関する覚書を締結している。韓国からサラワク地域に二酸化炭素を越境輸送し、圧入・貯留する構想で、日本の今回の発表の先例となっている。
マレーシア政府は現在、2050年までのカーボンニュートラルと、2030年までにGDPを分母とした原単位排出量を2005年比45%減とする目標を掲げている。また5月には、天然資源・環境・気候変動省が「再生可能エネルギー戦略開発ロードマップ」を発表し、電力供給量に占める再生可能エネルギー比率を2050年までに70%にまで高める目標も設定した。加えて、マレーシア政府は、国内での再生可能エネルギー確保を優先するため、2021年10月以降から再生可能エネルギーの海外輸出を禁止。これは実質的にシンガポールへの輸出がターゲットとなっていた。しかし、その後、産業誘致等の観点から輸出禁止が足枷になるとの批判の声が上がり、5月に解禁の方針も決めていた。
さらに、マレーシア経済省は7月、「エネルギー移行ロードマップ(NETR)」のフェーズ1を発表。2050年までに4,350億マレーシアリンギットから1兆8,500億マレーシアリンギットの投資機会を開拓できるとし、10の主要プロジェクトを打ち出している。7月発表のフェーズ1では、250億マレーシアリンギットを投資し、省エネ、再生可能エネルギー、水素、バイオエネルギー、グリーンモビリティ、炭素回収・利用・貯留(CCUS)の6つを主要分野として設定。雇用創出23,000人、年間二酸化炭素排出削減量1,000万tを目安として掲げた。
具体的なプロジェクトの例としては、浮体式太陽光発電を、TNBの水力ダム貯水池は2.5GW。住宅用太陽光発電を屋上リースを通じて住宅に4.5MWを設置。サラワク州で3つの統合水素プロジェクトを実施。高速道路や商業施設にEV充電ステーションを1万カ所設置。ペトロナスが主導するKasawariとLang Lebahのガス田でのEOR(増進石油回収)プロジェクト型のCCUSを挙げていた。
【参照ページ】経済産業省、JOGMEC、マレーシア・ペトロナス社の三者による 二酸化炭素の越境輸送・貯留に関する協力覚書の締結
【参照ページ】PETROS SIGNS DEAL WITH KOREAN POSCO GROUP FOR DEVELOPMENT OF CSS BUSINESS IN SARAWAK
【参照ページ】RM25 BILLION COMMITTED INVESTMENTS AND 23,000 HIGH-QUALITY JOBS TO KICKSTART PHASE ONE OF THE NATIONAL ENERGY TRANSITION ROADMAP (NETR)
【参照ページ】STRATEGIC DEVELOPMENT & CROSS-BORDER TRADE POLICY FOR RENEWABLE ENERGY
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