
国際環境NGO世界自然保護基金(WWF)の日本支部WWFジャパンは8月28日、日本企業65社による2024年の自然関連財務情報開示タスクフォース(TNFD)開示の傾向と今後の期待をまとめた調査レポート「2024年TNFD開示の潮流と日本企業の対応状況」を発表した。
WWFジャパンは2024年9月、初期のTNFD開示で特に重要だと考えられるキーポイント4つを独自に提示。具体的には、「TNFDで開示するマテリアリティの選択」「4つの自然関連課題の特定・評価、および優先地域の特定」「ミティゲーションヒエラルキー(マイナスインパクト回避の優先)」「IPLC(先住民族と地域社会)と、影響を受けるステークホルダー」を挙げた。4つの自然関連課題とは、依存・インパクト・リスク・機会を指している。
今回の調査では、2024年1月1日から12月31日にTNFD提言に基づいて情報開示を行った日本企業65社を対象に、キーポイントの開示有無を確認。但し、キーポイントは、特定の業種向けに作成されておらず、業種や各社の特徴によってTNFD開示の難易度は異なるとし、開示の網羅性や、取り組み内容の質、パフォーマンスを評価したものではなく、ランキングを目的としたものではないと語った。
調査対象企業は、アサヒグループホールディングス、味の素、イオンモール、伊藤園、伊藤忠商事、王子ホールディングス、大阪ガス、小野薬品工業、花王、関西電力、キリンホールディングス、クボタ、熊谷組、コカ・コーラボトラーズジャパンホールディングス、コーセー、サッポロホールディングス、サントリーホールディングス、資生堂、島津製作所、清水建設、住友ゴム工業、住友商事、住友林業、積水化学工業、積水ハウス、セブン&アイ・ホールディングス、ソニーグループ、大王製紙、大成建設、大日本印刷、大和ハウス工業、竹中工務店、中部電力、ツムラ、デンソー、東急不動産ホールディングス、東京電力ホールディングス、豊田通商、日産化学、日清オイリオグループ、日清食品ホールディングス、ニッスイ、日本空港ビルデング、日本航空、日本製鉄、日本ハム、野村不動産ホールディングス、ファミリーマート、富士フイルムホールディングス、ブリヂストン、ポーラ・オルビスホールディングス、マルハニチロ、三菱商事、明治ホールディングス、森永乳業、ヤマハ、横浜ゴム、リゾートトラスト、ロッテホールディングス、ANAホールディングス、J.フロントリテイリング、LIXIL、TDK、TOPPANホールディングス、TOYO TIRE。
2024年開示の調査結果では、選択したマテリアリティ・アプローチ(財務マテリアリティやインパクトマテリアリティ)を明示した企業は65社中13社。自然関連課題のうち依存・影響関係では、65社全てが原材料として扱うコモディティや事業部門を特定する等の分析を進めていたものの、多くの企業がENCORE等のツールを活用した一般論の分析結果に留まっていた。さらに、場所に基づく自社と自然との依存・影響に伴うリスク・機会を分析している企業は一部だった。
ミティゲーションヒエラルキー(マイナスインパクト回避の優先)に沿ったアクションでは、節水目標等、従来の施策とTNFDフレームワークとの親和性が一定程度みられた。しかし、バリューチェーン全体を俯瞰し、自然との依存・影響関係を分析した上で、マイナスインパクトの回避・軽減に向けた全社的なコミットメントを掲げる企業は、依然として少数だった。
IPLC(先住民族と地域社会)と影響を受けるステークホルダーへのエンゲージメントでは、自然関連課題の視点からIPLCへの影響を分析するという視点は、未だ多くの企業の開示から抜け落ちていたと指摘。一方、国際的な人権規範への賛同は65社全てが掲げていた。
対象企業への今後の期待では、バリューチェーンの上流・直接操業・下流いずれにおいても、どのように自然に依存、影響するのかの分析を一般的な記載内容に留めず、自社の特徴を踏まえて丁寧に進めることが重要と説明。また、特定したマイナスインパクトの回避・軽減のために、既存の事業モデルをどのように変革させていくかの戦略を立て、社内のコミットメントを得ながらアクションを開始することが望まれるとした。
さらに、情報入手が難しいバリューチェーンの上流・下流における自然への影響、直接操業における具体的なインパクトの経路に基づいた検討・分析を期待。自社の活動が具体的にどの場所で影響があるのかを特定することが、自然への具体的な影響、先住民等を含む近隣住民への影響の分析を行なう上でも重要とした。人権観点では、具体的なエンゲージメントの実施、取り組み内容の開示も求めた。
今後の開示の参考となる企業の開示事例としては、住友林業の優先地域の特定、花王のバリューチェーン上流のトレース状況、パーム調達に関する苦情受付体制、王子ホールディングスの測定指標とターゲット設定、コーセーの場所に基づく依存、インパクト分析を紹介した。
【参照ページ】『2024年TNFD開示の潮流と日本企業の対応状況』を発表 ~日本企業65社の開示状況を調査した実践的な参考情報として~
【レポート】2024年TNFD開示の潮流と日本企業の対応状況
【レポート】TNFD 開示にあたってのキーポイント V1.0
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