米サンフランシスコ連邦地方裁判所は8月1日、日本と米国の環境NGOが米国防総省を相手取り起こしたジュゴン訴訟の差し戻し審で訴えを棄却した。原告側は不服とし控訴する考え。
ジュゴン訴訟は、米軍普天間飛行場移設に伴う名護市辺野古の新基地建設のため周辺海域を埋め立てる工事が、絶滅危惧種ジュゴンの生存を脅かすというもの。米国家歴史保存法(NHPA)402条は、国内外の文化財保護のため破壊の恐れがある場合に地元関係者との協議も含めた環境アセスメントを行う義務を課している。今回の裁判では、同402条が米国領域外にも適用されるか、米国防総省の工事が同402条に違反しているかを中心に行われてきた。
ジュゴン訴訟は2003年にサンフランシスコ連邦地方裁判所に提訴される形で開始。最初の中間判決では、早くも同402条が米国領域外にも適用されると判断された。そして2008年、再び中間判決という形で、国防総省側の同402条違反が認められ、ジュゴンへの悪影響を回避、軽減するため地元関係者との競技を含めた手続きを取るよう国防総省に命令した。しかしながら、国防総省側からの報告待ちだった2012年2月、領海の当事国である日本の環境アセスメントが継続実施中であることや、新基地建設が当時の民主党政権のもとでは進展しない観測があり緊急性が薄れたことから裁判は一時休止となる。
次に事態が動くのは2014年4月。国防総省が同402条に基づくアセスメントを履行したとして、報告書を同裁判所に提出した。これに対し、原告側は、同裁判所が求めていた「民間団体と個人を相手とした協議」が履行されていないと主張している。そして原告は2014年7月31日、同裁判所に対し、国防総省の報告書の無効判断を求める宣言的判決と、国防総省がNHPAに基づく義務履行までの基地建設の差し止めの2点を要求する訴訟再開の申し立てを行った。
同裁判は2015年2月に一旦一審判決が出る。結果は、差止請求については政治問題と認定し裁判所は可否を判断する権限がないと却下。もう一つの無効判断については、無効にしたとしても原告が望む基地建設中止という救済の可能性(Redressability)はないと判断し、当事者適格がないと請求を却下した。原告側は不服とし控訴。2017年に控訴裁判所が当事者適格を認め、審理を連邦地方裁判所に差し戻す。そして、今回差し戻し審の判決が出て、再び却下。理由は、国防総省の委託として行われた調査と日本政府の環境影響評価等に鑑みたところ、ジュゴンに悪影響はないする米政府側の主張を認めたため。
今回の裁判は、米国領域外の案件で同402条が争われる史上初の訴訟となったこともあり、大きな注目を集めた。原告団は60日以内に控訴の是非を判断する。
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