米ハーバード大学のラリー・バコウ学長は4月21日、2050年までの二酸化炭素ネット排出量ゼロ(カーボンニュートラル)にコミットすると発表した。同大学の運営基金(エンダウメント)に対しても、2050年までのカーボンニュートラルを実現することを要求した。エンダウメントでの2050年カーボンニュートラル宣言は、米国大学で初。バコウ学長は、気候変動を「現代の決定的な課題」と言及した。
2050年までのカーボンニュートラルは、パリ協定での目標を達成するために必要なアクション。エンダウメントを管理するハーバード・マネジメント・カンパニー(HMC)は今後、委託先の運用会社と協働し、ポートフォリオのカーボンフットプリントをゼロにする手法を検討していく。また同大学の教授陣や専門家とも協働する。HMCは、2014年に国連責任投資原則(PRI)にも署名。2019年9月には、機関投資家の気候変動アクション・イニシアチブ「Climage Action 100+」にも参画している。HMCの運用資産残高(AUM)は2019年で19億米ドル(約2,000億円)。
ラリー・バコウ学長は今回、学長直属の諮問機関としてサステナビリティ委員会を創設。ハーバード・ビジネス・スクールのレベッカ・M・ヘンダーソン教授、ハーバード・ケネディ・スクールのジョン・ホルドレン教授、キャサリン・ラップ副学長が共同議長を務め、同大学の包括的なサステナビリティ・ビジョンを策定する。バコウ学長は、気候変動に関心高く、2月には、化石燃料関連企業からの寄付金の引き揚げについて、同大学教授らと決議した。
同大学はこれまでも、ドリュー・ファウスト前学長のもと、環境保護に向けて多くの取り組みを実施。サステナビリティ室を公式に設立し、2016年には、キャンパス内の二酸化炭素排出量30%削減も実現した。2018年には、化石燃料ダイベストメントを2026年までに実現し、2050年までに完全撤退する行動計画も発表していた。
【参考】【アメリカ】ハーバード大学基金、Climate Action 100+加盟。カリフォルニア大は化石燃料ダイベストメント
英オックスフォード大学も4月27日、同大学のエンダウメントを管理するオックスフォード大学エンダウメント・マネジメント(OUem)に対し、ポートフォリオの二酸化炭素ネット排出量ゼロ(カーボンニュートラル)を指示。同時に、ポートフォリオ内で化石燃料関連企業のダイベストメントを実施すると宣言した。運用資産残高(AUM)は30億ポンド(約4,000億円)。
同大学は今回、OUemにエンダウメントと気候変動の双方に詳しい専門家を理事に選任することも決めた。同大学も2007年以降、エネルギーセクターへの投資割合を減らしており、8.5%から2.6%に低減。そのうち0.6%分は再生可能エネルギーが占める。
大学基金の資金は、同大学に通う学生の補助等にも活用されるため、海外名門大学において運用成果は重要となる。こうした中でも、世界から優秀な人材を集めるハーバードおよびオックスフォード大学は、投資運用に気候変動観点の組み入れを行い、カーボンニュートラルに舵を切った。
【参照ページ】Harvard endowment to go greenhouse gas-neutral by 2050
【参照ページ】Oxford announces historic commitment to fossil fuel divestment
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