自動車世界大手米フォードは7月21日、電気自動車(EV)の台数を2023年後半までに60万台、2026年末までに200万台以上する目標を発表。EVバッテリーや原材料の確保に向けた戦略も発表した。
販売台数の内訳では、「Mustang Mach-E」を北米、欧州、中国に27万台投入。「F-150 Lightnings」を北米向けに15万台、「E-Transit」を北米及び欧州向けに投入。さらに欧州向けの新型SUV車種も3万台とし、2024年に大幅増産を予定している。
これにより、2026年までのEVの年間平均成長率は90%を上回る勢い。世界的な業界成長予測の2倍以上の水準を目指す。そのため、2026年までEV分野に500億米ドル以上を投資する。財務目標では、2026年までに会社全体の調整後EBITマージンを10%、EVのEBITマージンを8%にすることを目標として設定した。2030年には、世界生産の半分以上をEVにする。
EVサプライチェーンの構築では、環境サステナビリティと人権へのコミットメントを守ると表明。そこで、既存のニッケル・コバルト・マンガン(NCM)化学に加え、リン酸鉄リチウム(LFP)セル化学をEVバッテリーのポートフォリオに追加する。これにより、高需要の製品群のためのバッテリー容量を増やし、航続距離の減少も最小限に抑えることができるという。同時に、ニッケル等の希少な重要鉱物への依存度を下げることで材料費も従来のNCM電池と比べて10%から15%削減することも見込んだ。
LFPは、「Mustang Mach-E」と「F-150 Lightnings」に搭載する計画。サプライヤーは中国CATL(寧徳時代)で、2024年初頭から供給を開始する。一方、NCMバッテリーの調達では、韓国LGエナジーソリューション(LGES)が、「Mustang Mach-E」と「E-Transit」向けに、ポーランドのヴロスワフ工場での生産能力を2倍にまで拡大する。また韓国SK Onは、2023年後半までに「F-150 Lightnings」と「E-Transit」向けに、アトランタ工場でNCM生産能力を当初計画より増加させる。
これらにより、バッテリーの年間生産容量を2023年までに60GWhを確保する。2026年目標の年間200万台を実現するための電池容量の70%を既に確保した形。加えて同社は、2026年から北米で40GWhのLFP容量をローカライズする計画も公表した。
バッテリー原材料の確保では、同社は米国、オーストラリア、インドネシア等での直接調達も開始。ヴァーレ・インドネシアと華友鈷業との3者契約では、華友鈷業がニッケルをオフテイクし、年間85ktpaをフォードに供給することを確保。BHPからのニッケル調達契約も交わした。リチウムでも、ライオンタウン・リソーシズや、リオ・ティントともオフテイクの覚書を締結している。ヴァーレ・カナダとは、バリューチェーン全体での機会探求の覚書も交わした。
さらに原材料供給を米国現地化するため、EcoPro BMとSK Onとは、正極材の生産工場を北米に建設する覚書を、ioneerとは炭酸リチウムをネバダ州の工場で生産する覚書を交わした。コンパス・ミネラルズは、ユタ州工場で水酸化リチウムと炭酸リチウムを生産する構想。黒鉛でも、Syrah ResourcesとSK Onが、ルイジアナ州の処理場から天然黒鉛を引き取る計画も発表している。
同社は7月20日には、身体障害者ドライバー向けに、EV車内からスマートフォンで操作できるロボット充電ステーションのプロトタイプを開発したことも発表。ドイツのドルトムント大学との共同開発で、将来的には、身体障害者用駐車スペースや住宅等での設置を検討している。
【参照ページ】FORD RELEASES NEW BATTERY CAPACITY PLAN, RAW MATERIALS DETAILS TO SCALE EVS; ON TRACK TO RAMP TO 600K RUN RATE BY ’23 AND 2M+ BY ’26, LEVERAGING GLOBAL RELATIONSHIPS
【参照ページ】FORD TRIALS ROBOT CHARGING STATION DESIGNED TO GIVE DISABLED DRIVERS A MUCH NEEDED HELPING HAND
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