米ユタ州立大学の研究者らは8月9日、米連邦政府管轄の海域の採掘ポテンシャル地周辺での海底資源採掘が、海洋生態系と人間の生活に有害な影響をほぼ確実に与えることを特定したとする論文を発表した。米国内での海底資源採掘を巡る議論も熱を帯びてきている。
【参考】【国際】国際海底機構総会、深海底資源開発停止巡る議論で白熱。37機関投資家は停止要求(2023年8月15日)
同研究では、米国の排他的経済水域(EEZ)のうち、コバルトやリチウム等の海底鉱物の存在が予測されるブレイク海台、ハワイ諸島、カリフォルニア州沖、アラスカ湾の4つの深海域を対象とし、環境的特徴と人間による利用について広範な規模のデータセットを作成した。
その結果、深海域には、絶滅危惧種の生息や、生物種が豊かな海域であることを確認。また、人間の生活では、漁業水揚げ量が多く、海底ケーブルや船舶航路としても活用されている海域であることもわかった。
同論文は、今回の行った分析手法は他の深海域にも適用できると断言。海底資源開発の前に十分なリスク評価を行い、リスク対策を講ずることの必要性を説いた。一方、包括的な評価を行うためには、依然として不足しているデータが多いとし、現在存在するものよりも細かい空間スケールで環境、人間利用、海洋鉱物のデータを収集し、公共データベースで利用できるようにすることが喫緊の課題とした。
米国ではすでにハワイ州選出の民主党エド・ケース下院議員が7月、米国企業の海底資源採掘の一時停止を求める法案と、公海での深海底資源採掘の一時停止を求める法案の2つを連邦下院に提出。下院天然資源委員会での審議が始まろうとしている。
米国領海内での海底資源開発の一時停止を求める法案「米国海底保護法」では、海底資源採掘の一時停止(モラトリアム)を法定化し、米国管轄の海底での資源開発と、米国企業が米国管轄海域海底と公海深海底で資源採掘を行うことを禁止するもの。同時に、米海洋大気庁(NOAA)と全米科学アカデミーに対し、採掘が海洋生物に与える影響について評価することも求めている。
公海での新海底資源採掘の一時停止を求める法案「国際海底保護法」は、国際海底機構(ISA)が海洋生態系を適切に保護するルールを確立し、米大統領が承認するまで、米国政府が国際的な深海底資源採掘に反対することを義務づけるもの。
他方、すでに州レベルでは、東海岸のカリフォルニア州、オレゴン州、ワシントン州はすでに州領海での海底資源採掘を禁止する州法を成立。ハワイ州でも同様の州法の立法化が州議会で進められている。米国では、国際法で定められた12海里の領海のうち、国内法により、沿岸3海里は州領海、それ以降は連邦政府(内務省)所管の海域となっている。但し、テキサス州とフロリダ州西側海域、プエルトリコに関しては、州海域が9海里までと広い。
【参照ページ】An initial spatial conflict analysis for potential deep-sea mining of marine minerals in U.S. Federal Waters
【参照ページ】Case Introduces Measures To Halt Deep-Seabed Mining Until Full Consequences Understood And Protective Regulatory Regimes Established
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