世界経済フォーラム(WEF)は12月5日、栄養観点での世界的な食料システムの変革を提唱したレポート「栄養のニューフロンティア」を発行した。人間と地球の健康の双方に焦点を当てた。
同レポートによると、近代栄養科学は100年以上前に、壊血病、くる病、悪性貧血に関連した栄養不足の課題から研究が始まったが、現在、このような単一疾病を解決するための栄養科学ではなく、人の健康のあらゆる観点を考察した栄養科学が必要となっている。
また同レポートは、栄養観点での社会的コストとして、世界の食料コスト9兆米ドルに加え、栄養不良による健康・疾病コストが11兆米ドル、食糧生産による環境悪化コストが7兆米ドル、健康を害したことによる労働生産性低下や医療費等の経済コスト1兆米ドルと算出。人間社会は、実際に食べる食料以上に、食料を起因とした大きな社会的コストを負担させられている状態にある。
それを踏まえ、同レポートでは、食文化を考慮した上で、加工を最小限に止め、植物性食材を重視し、食物繊維や生物活性が豊富なものを消費する食習慣を世界中に広げるため、利用可能性、アクセス、採用可能性の3つを重点的に追求していく必要があるとした。
さらに、2035年までのアクション分野として、利用可能性では食品メーカーや小売企業に健康的で栄養価の高い食品を大規模に展開するようインセンティブ付けすることを、アクセス拡大では健康的で栄養価の高い食品に関し、アフォーダブル(手頃な価格)でアクセスしやすい状況で地域社会に提供できる仕組みを開発することを、採用可能性では消費者が栄養価の高い製品の選択を、最も容易でシンプルでおいしい手法でできるよう支援することを掲げた。
これらの問題を解決するため、企業に求められる戦略レバーとしては5つを挙げた。
- 多様で栄養豊富な食品の栽培と生産
- 不健康な加工食品の栄養成分改善(Reformulate)
- 栄養素の高い食品をアフォーダブルかつアクセシブルに
- 栄養素の高い食品をデフォルトで選ぶことのできる小売環境の構築
- 消費者に向け食と健康の関係性の認識を拡大
世界経済フォーラムは今後、「製品ポートフォリオ・イノベーション」と「最先端ビジネスモデル」2つのプラットフォームを設置する予定。各々のプラットフォームでは、上記5つの変革を実現するための機会を特定していく。
【参照ページ】Transforming the Global Food System for Human Health and Resilience
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