グローバルアカウンティングファームのKPMGは先日、企業の外部性(企業活動が社会にもたらす正および負の影響)に着目し、企業価値と社会価値との関係を分析した興味深いレポートを発行した。
同社の公表したレポート”A New Vision of Value: Connecting corporate and societal value creation”によれば、企業価値と社会価値の関連性はより高まってきており、企業は企業価値を創造、維持するためには自社が社会に与えている価値についてもより深く理解する必要があるという。
KPMGは同レポートの中で、企業価値創造と社会価値創造との結びつきをかつて以上に強くしている主要なドライバーとして下記3つのポイントを指摘している。
- 新たな規制や基準:政府による法規制や課税、報告開示義務や認証など
- 高まるステークホルダーからの圧力:NGOや市民グループ、労働者など
- 市場を取り巻く環境の変化:資源の枯渇や異常気象など
KPMGによれば、これまで企業のキャッシュフローやリスク評価にあまり影響がないとされてきた企業の外部性が、上記3つのドライバーにより企業価値の創造とより深い関係を持つようになってきており、新たなリスクと機会をもたらしているという。
上記3つのドライバーがこれまで無視することができた負の外部性をコストや利益の損失として企業が背負わざるを得ない状況を生み出しつつあり、外部性にどのように対処するかが企業価値の向上や損失に直結するようになってきているのだ。
レポート内では、これらのドライバーが具体的にビジネスに与えている影響について、南アフリカの金鉱山、インドの醸造、米国のプラスティックプラントの3つを事例に挙げて説明されている。
KPMGの気候変動・サステナビリティ部門のグローバル責任者を務めるAdrian King氏は「これまで企業が持つ外部性は企業価値の測定基準から外されてきた。しかし今日では、企業価値と社会価値の創造はそれぞれより密接に関係するようになってきている」と語る。
また、同氏は「企業の外部性は今や企業価値を生み出す過程の一部となっており、企業経営者や投資家らは新たな価値を生み出し、リスクを管理するため、この新たなダイナミクスに気づく必要がある。彼らは自社がもたらす外部性を特定、定量化し、何が内部化のドライバーなのかを認識し、企業価値との関連を理解する必要がある」と指摘し、自社の事業活動が社会に与えている正および負の影響に着目し、それらを内部化していくことの重要性を強調した。
また、同レポートでは企業が自社の外部性を内部に取り込み、社会価値と企業価値を結びつけるためのポイントとして投資家、企業経営者、政策立案者に対して下記6つを提示している。
- リーダーシップと具体的な行動の提示
- 受託者責任の概念の明確化
- 企業価値と社会価値の関係に対するより深い理解
- 権限とインセンティブの変革
- データの質の改善
- 政策による環境整備
上記ポイントのうち、投資家は1?5、企業経営者は1、3、4、5、政策立案者は2、3、5、6に重点的に取り組むべきとしている。
同レポートは企業が持つ外部性という観点に着目し、企業価値と社会価値の結びつきがなぜ強くなってきているのか、そしてその環境変化に対して投資家、企業、政策立案者は具体的に何をすべきなのかが定量データや具体的な事例を基に解説されており、とても興味深い内容になっている。興味がある方はぜひ下記からダウンロードして詳細を読んで頂きたい。
【レポートダウンロード】A New Vision of Value: Connecting corporate and societal value creation
【企業サイト】KPMG
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