英紙ガーディアンなどを運営するガーディアン・メディア・グループ(以下、GMG)は4月1日、化石燃料関連企業への投資から資金を引き揚げると発表した。GMGの投資資金は8億ポンド以上に及び、これまで化石燃料銘柄からの投資撤退を宣言した企業の中で最大規模となる。
この決定について、GMGの会長を務めるNeil Berkett氏は「今回の決定は財務面、倫理面の双方から見て正しいものだ。難しい意思決定ではあるが、これは我々の組織としての価値観に基づくもので、あらゆる要素を考慮したホリスティックな意思決定だ」と語った。
同氏は今回の決定を下した理由として、近年化石燃料銘柄は相対的にパフォーマンスが優れず、気候変動対策の推進により将来の見通しも暗くなっている一方で、GMGが保有する倫理的な基準に基づく投資資金の運用は好調に推移しており、更に再生可能エネルギーも力強く成長している点を挙げている。
この昨今の化石燃料銘柄からの資金引き揚げトレンドについて、Berkett氏は「GMGの投資ファンドの主たる目的、つまり将来にわたる財務的安定性とガーディアンの編集における独立性を保証するために長期的なリターンを生み出すという目的をリスクにさらすことなく、社会的責任投資の基準を適用することができるということを意味している」と語った。
現在のGMGの化石燃料企業への投資割合は全資産の1割に満たないが、今後の具体的な資金撤収予定については、Berkett氏は今後数年間で化石燃料関連銘柄への直接的な投資を撤収し、5年以内に化石燃料を含む多様な資産からなるファンドからも資金を引き揚げるとしている。
今回の決定に至るまで、Berkett氏はGMGの投資顧問であるCambridge Associatesと2ヶ月にわたり検討を重ねた。主要な検討事項となったのは、GMGがファンドマネジャーらに対して、化石燃料を含まない投資オプションを提供するように影響力を発揮することができるかどうかの判断だったという。同氏によれば、17,400の機関投資家のうち、現在ポートフォリオの中に化石燃料銘柄を含めていないファンドマネジャーはたった数十しかないという。
ガーディアンを始め、今世界では化石燃料銘柄から資金を引き揚げる動きが活発化しつつある。その背景にあるのは、気候変動など環境面からの懸念だけではなく、それが実際に長期的に投資パフォーマンスに悪影響をもたらすという財務面の懸念だ。その逆に、再生可能エネルギーをはじめとする低炭素経済への移行を実現するための投資は、その将来性を買われて投資家の間で人気を集めている。社会的責任投資という言葉を使わずとも、それがリターンを追求する投資家にとって当然の投資判断基準となる日はもうそこまで来ている。
【参考記事】Guardian Media Group to divest its £800m fund from fossil fuels
【企業サイト】Guardian Media Group
(※写真提供:Radu Bercan / Shutterstock.com)
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