
サステナビリティ報告に関する国際ガイドラインのGRIと国際NGOのオックスファム・オランダは6月9日、多様なステークホルダーごとのサステナビリティデータの活用状況についてまとめた報告書"Informing decisions, driving change"を公表した。同報告書では、市民団体、投資家・情報ベンダー、企業、政府・規制機関、メディアという各ステークホルダーがサステナビリティデータをどのように活用し、どのように成果を上げているかについて成功事例と共にまとめられている。
GRIは、現在世界の大手企業の間でサステナビリティ報告が普及したことでサステナビリティに関するデータは年々莫大に増加しているものの、各ステークホルダーはそれらのデータを十分に活用しきれていないと指摘している。特に喫緊のサステナビリティ課題を多く抱える開発途上国においては、サステナビリティ報告の過程で得られるデータを最大限に活用することで多くの恩恵を受けることができるとしている。
報告書の中でまとめられている各ステークホルダーの主なデータ活用状況は下記の通りだ。
市民団体
企業らにプレッシャーを与える市民団体らは特に開発途上国において重要な役割を果たしており、市民団体はサステナビリティデータを活用することで自身のビジョン達成に向けたより効率的な活動が可能になる。市民団体は具体的なデータを提示することで企業のアカウンタビリティとパフォーマンス改善を促し、問題を広く一般の人々に訴えかけることも可能になる。また、ひいては自身の活動成果の測定にも役立てることができる。
投資家・情報ベンダー
投資家および投資家に情報を提供するベンダー、格付機関などにとってもサステナビリティデータは重要な役割を果たしている。比較可能な形で収集されたデータは、ベンチマークの提供により企業間のパフォーマンス改善に向けた競争を促し、投資家に対してはよりサステナブルな投資意思決定を助け、よりサステナブルな会社に光をあてることを可能にしている。
企業
企業は自社および他社のサステナビリティデータの両方を、サプライヤーの選定からKPIの設定に至るまで組織内・外の意思決定に役立てることができるとしている。また、組織内部へのメリットとしては、企業の経営陣に対してデータを提示することで、サステナビリティパフォーマンスを改善するよう働きかけることができる。
政府・規制機関
政策立案者らは政策や方針策定の際にますますサステナビリティ要因を考慮するようになってきている。政府や規制機関らは、自身のサステナビリティパフォーマンスデータを示すことで管理区域の企業に対して事例を提供することができる。また、サステナビリティデータを活用することで管理区域の進捗状況をモニタリングし、パフォーマンスを改善することができる。
メディア
メディアは健全な民主主義の実現と持続可能な発展において大きな役割を担っており、メディアがサステナビリティに関する課題を良い方向に持っていくためには、信頼できるデータにアクセスできる必要がある。また、メディアはデータを用いて問題を世間の明るみに出したり、第三者としてパフォーマンスランキングを公表したりすることもできる。
また、GRIはそれぞれのステークホルダーが抱える課題についても提示している。政府や規制機関に対しては、ガイドラインをベースとしつつも様々な開示オプションを用意するなど報告者の助けとなる方針策定や中小企業の支援、データの報告組織に対してはデータの正確性や信頼性の確保とコンテクストの配慮、そしてデータの利用者に対してはコンテクストへ注意を払うことと客観的な視点を意識するようにアドバイスしている。また、GRI自身に対しては、テクノロジーを活用したデータへのコンテクスト付与と、キャパシティ向上を課題として挙げている。
現在世界が抱えるサステナビリティ課題を解決に導くためには、各ステークホルダーがサステナビリティデータを最大限に活用し、自身の活動や意思決定に役立てることが必要不可欠だ。サステナビリティ報告のデジタル化も進み、より膨大なデータが蓄積され続けている現代では、このビッグデータをどうポジティブインパクトの創出に活用できるかが明暗を分けることになりそうだ。同報告書ではステークホルダーごとの成功事例も数多く掲載されているので、興味がある方はぜひ確認して頂きたい。
【レポートダウンロード】Informing decisions, driving change
【参照リリース】The Role Of Data in a Sustainable Future
【団体サイト】GRI
【団体サイト】Oxfam Novib
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