【アメリカ】ゴールドマン、米国初のソーシャル・インパクト・ボンドプロジェクトを中止 2015/09/13 最新ニュース

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 米証券大手のゴールドマンサックス(以下、ゴールドマン)が資金提供していた米国初のソーシャル・インパクト・ボンド(以下SIB)のプロジェクトが、数値目標の未達を理由に中止となった。同プロジェクトは、ライカーズ島刑務所に収監された16歳から18歳までの若者に対し、ソーシャルスキルの向上や責任感の醸成、自己決定能力の育成などを目的とした教育支援を実施するというもので、4年間で再犯率を10%以下にすることを目標としていた。

 SIBは2010年に世界で初めて英国で導入されたシステムで、税金を使わずに社会的課題を解決・改善することを目的としている。政府機関・地方自治体などの公的セクターと、金融機関、NPO、そして投資家による共同プロジェクトだ。金融機関が投資家から資金を集め、NPOなどのサービス提供者が事業を実行し、成果が出た場合には予め合意された利率が公的セクターから金融機関を通じて投資家にリターンされるという仕組みだ。

 最初のプロジェクトとなったのは英国ピーターボロ刑務所で実施された再犯防止・受刑者社会復帰を目的としたもので、2014年8月の中間成果発表では目標に達していなかったものの、事業の進捗は順調で2016年以降には投資家への償還が開始される可能性が高いとして、プロジェクトは現在も継続されている。

 一方、米国ライカーズ島のプロジェクトはゴールドマンが資金を提供し、2012年に前ニューヨーク市長のMike Bloomberg氏の下で開始した。ライカーズ島の刑務所から釈放された全ての10代の若者のうち、約半数が1年以内に再収監されていたという問題に対処するためにSIBが導入された。社会政策分野のNPO、MDRCの監督下でThe Osborne AssociationとFriends of Island Academyの2団体が実行母体となっていた。

 しかし、同プロジェクトの評価を担当するNPOのVera Institute of Justiceは、目標未達によりプロジェクトは2015年8月で終了すると発表した。過去3年間の再犯率の削減は統計的に有意性が見られなかったという。再犯率が現時点で少なくとも9%削減されている場合、4年目が継続される見通しとなっていた。

 コールドマンは同プロジェクトに720万米ドルを投入しており、同プロジェクトにより節約されたぶんの全ての配当を受け取る予定になっていた。目標が達成できない場合に備えてブルームバーグ慈善財団が600万米ドルを補てんしているため、ゴールドマンは実質120万米ドルの損失となる。

 SIBは税金を使わずに社会サービスに資金を提供する革新的な方法として歓迎されてきた。英国や米国の他、オーストラリ、ドイツ、ベルギーなどでも実施され、日本でも2015年5月から日本財団の主導により横須賀市で特別養子縁組推進のパイロット事業が始まっている。

 一方で、SIBの可能性や推進については創始した英国でも様々な意見がある。目標が達成できないケースでも社会改革と投資家をつなぐモデルとして今後の発展が期待できるという見方もある一方で、SIBはまだ未完成のシステムであり、投資家を継続的に惹きつけられるかどうかや評価やリターンの妥当性、そしてSIBの創設にかかるコストなどの視点からの慎重論もある。

【参照記事】NY Post “Goldman gives up on jailed teens after its social program fails”
【参照記事】The Guardian “Social impact bonds: is the dream over?”
【参照記事】Huffing Post “What We Learned From the Nation’s First Social Impact Bond”
【参照記事】Government UK:Final results for cohorts 1 payment-by-results prison pilots
【参照記事】Third Sector Editorial: A qualified success for the Peterborough prison social impact bond
【参照記事】国内事例 – ソーシャルインパクトボンド Social Impact Bond
【企業サイト】Goldman Sachs
【団体サイト】Vera Institute of Justice
【団体サイト】MDRC

株式会社ニューラル サステナビリティ研究所

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